ホームへ メールマガジン登録


□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□

┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                     第128号 2014年12月1日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■ 目次 ■■
●特集レポート
「企業年金コンサルティングの現場から」(111)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(2)
  「リスクとリターンについて(1)」
 ★マーケットトピックス
  「米景気:順調な回復が継続、FRBはQE3を停止。日本:意表を突く追加緩
   和、GPIFの資産構成割合・リスク拡大、消費税見送り、総選挙へ」
 ★年金トピックス
  「確定拠出年金加入者平均利回り過去最高の3,59%」
   「年金情報」調査
●年金相談の現場から(37)
「公的年金等受給者の扶養親族等申告書について」
●NPOアクティビティー
 出版のお知らせ
◇最新版・2014年版 平成26年2月28日発売!
「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2014年版
◇最新版好評発売中!! 平成26年5月30日発売!!
「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■特集レポート
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 企業年金コンサルティングの現場から(111)
           (株)格付投資情報センター投資評価本部
           年金事業部担当部長 チーフアナリスト 坂井信夫
 ◇◆◇
 10月末日、年金積立金管理運用独立行政法人(以下「GPIF」と表記)は、
基本ポートフォリオの変更について、厚生労働大臣の認可を受けたと発表し
た。新旧の政策アセットミックスとそれぞれの許容幅、ならびに11月下旬に
発表となった9月末の時価構成比などを下の表にまとめた。内外の株式ウエー
トをそれぞれ25%とする、外国債券のウエートを15%とし、株式と合わせた
外貨資産の合計を40%とする、あたりは正直なところいささかサプライズで
あった。

GPIFの新旧政策アセットミックスと許容乖離幅
単位:%

|            |国内株|国内債|外国株|外国債|その他|
|旧政策アセットミックス | 12.0 | 60.0 | 12.0 | 11.0 | 5.0 |
|      同 許容幅 |18〜6 |68〜52|17〜7 |16〜6 |   |
|新政策アセットミックス | 25.0 | 35.0 | 25.0 | 15.0 |   |
|      同 許容幅 |34〜16|45〜25|33〜17|19〜11|   |
| GPIF 9月末時価構成比 | 18.2 | 49.6 | 17.4 | 12.1 | 2.6 |

 9月末の時価構成比に目をやると、内外株式ウエートが、旧政策アセット
ミックスのほぼ上限に達している一方で、新政策アセットミックスの下限ぎ
りぎりにも達しているという、とても微妙な数値といえよう。
 今回の見直し報道は、日銀の金融緩和とともに株式市場では好感され相場
が上昇したため、短期的には年金運用にとってもプラスの効果を享受してい
るのだが、実をいうと厚生年金基金関係者にはそれほど好評というわけでは
ない。その主な理由は二つある。
 今回の変更は、内外株式や外債を直ちに買い増すということではない。GP
IFの管理運用体制改革の進捗なども踏まえて徐々に行うとされ、ゆえに当面
は許容幅から逸脱することも容認する、という方針も付記されている。これ
は、GPIFが乖離部分を埋めるためにいつ買い増ししてくるのか、外部からは
わからない状態がしばらく継続することを意味する。GPIFに劣後しない運用
リターンを目指す基金にとって、GPIFの特に内外株式ウエートの近似値が推
計できないのは問題である。
 もし、従来通りの推計方法で彼らの保有ウエートを推測した数値が、実態
から大きくはずれてしまって、そこに株式相場の急変動が起こったら!もし、
それが要因となってGPIFに対してリターンが大きく劣後してしまったら!そ
してもし、そのリターンの劣後によって、代行割れの決算となってしまった
ら!こういった事態の発生を憂慮することが一つ目の理由だ。
 また、GPIFの新政策アセットでは内外株式比率は合計で50%である。一方
で直近の厚生年金基金の数値がどうなっているかというと、平均は40%未満
である。つまりGPIFの新政策アセットミックスは、厚生年金基金以上にハイ
リスクハイリターン志向になったといえるのだ。基金にしてみれば、リーマ
ンショック等の辛い時期を経て、なんとかここまで下げてきた株の比率を再
び高めて、ハイリスクハイリターンを志向することへの嫌悪感は強い。これ
が二つ目の理由といえるだろう。大きなマイナスリターンになって、虎の子
の加算部分の資産まで毀損してはたまらないからである。
 代行返上や解散を方針とする厚生年金基金にとって、代行資産はそう遠く
ない将来に国へ返還するものである。今回のGPIFの見直しは、代行資産の運
用に係る一切のリスクをできるだけ回避したいという心境を、基金関係者に
芽生えさせてしまったようだ。それらの帰結として、厚生年金基金の間には
代行資産の一部を国に返還する、「前納」という選択が、今後急速に広まっ
ていくことになるだろう。この「前納」については次回詳しく触れたいと思
う。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOトピックス
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★今からでも聞いてみよう投資の話(2) ――――――――――――――――
 リスクとリターンについて(1)

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 「投資(運用)にはリスクがつきもの」とよく言われる。リスクとは一般
的には危険とか損害、見返りがとれるかどうかは不確実なこと、となります。
しかし、全くリスクを取らないと言うことが様々な局面であり得るでしょう
か。「リスク」を極力回避するための方策がいろいろ考えられますから、リ
スクを最小限にして投資すると言う考え方があってもいいように思います。
 金融で言うリスクとは一般的な印象とは異なり、不確実な事象が発生する
ことを言い、不利益を受ける可能性を意味します。その見返りとしての「リ
ターン」とは利益、もしくは損失を言います。ここで注意したいことはリター
ンにはマイナス(損失)も起こり得ることです(参照:当NPO発行「働く人
のための確定拠出年金ハンドブック」79〜90頁)。
 これから取り扱うリスクは教科書上では投機的リスクと言い、不確実な事
象の中で、利益と損失どちらの可能性もあるものです。例えば為替レートの
変動で、円安は輸出企業にとっては利益を得る機会が多くなるが、輸入製品
もしくは輸入原燃料の依存が高い企業は損失を被ることになります。他に金
利や信用なども投機的リスクに含み、将来の予測があたれば、リスクとは言
っても利益を生むことになる。リスクとは利益を得るか、損失を被るかのい
ずれにせよ、その変動の大きさと定義します。
 それではリスクを極力抑え、プラスのリターン(利益)を得るにはどうす
ればよいかと言うことですが、その前に「ポートフォリオ」という言葉を覚
えて下さい。ポートフォリオとは紙挟み、折鞄を意味します。例えば家計を
考えてみると、預貯金、保険、証券、不動産、などの資産をお持ちだと思い
ますが、これら複数の資産の集合体をポートフォリオと言います。家計の中
では自然発生的に保有することもあるでしょうが、より効率的な持ち方とい
うものがあります。こうした複数の資産の最適な組み合わせを考え、リスク
を減少させることがポートフォリオの考え方になります。複数資産の考え方
は少し複雑になるので先送りして、次回はまず1資産に限ってのリスクとリ
ターンの考え方を見ていきます。
 投資を考える上で重要なことは、前述したリスクとリターンを知った上で、
1番目に投資先資産を良く調べること、2番目は段階的に投資を分散させるこ
と、3番目は保険(リスクヘッジ)をかけること、などが挙げられます。貴
重な資金を無駄にせずに資産を増やすこと、企業においては持続的な成長へ
とつなげていくこと、などを目指すうえで欠かすことはできません。まとめ
るとリスクとリターンの計測、そして知識と経験に基づいた投資決定が大切
になります。
 リスクの延長線に危険(リスク)資産と言う言葉があります。具体的には、
株式、債券の一部、REIT、商品、などがあります。一方で、国債などはリス
クが比較的小さいため安全(無リスク)資産と呼んでいます。投資先として
注意が必要なのは、主にリスク資産です。身近な投資信託も中身は株式であ
ったり、債券であったり、為替の要素も入ってきます。投資信託もリスクあ
る資産として、前述した3点の心掛けが必要だと言えます。
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 米景気:順調な回復が継続、FRBはQE3を停止。日本:意表を突く追加緩和、
 GPIFの資産構成割合・リスク拡大、消費税見送り、総選挙へ

                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 10月28日・29に開催された米FOMC(公開市場委員会)で、市場予想通り、
QE3の終了を決定しました。FRBは、量的緩和第3弾(QE3)に伴う資産購入を、
規模を縮小しながら継続して来ていて、現在は、月額150億ドルを購入して
いましたが、これを10月で終了することを決めました。米雇用市場の見通し
に「十分な改善が見られたと判断した」、と説明されています。
 FRBは、2008年秋のリーマン危機から凡そ6年に及ぶ異例の金融緩和政策の
正常化に向けて大きく舵を切ったことになります。今後、最初の利上げの時
期について、「声明文」にどのような表現がされるかが注目されていました
が、「相当の期間」という表現がそのまま据え置かれています。
 利上げの開始時期やその後の利上げペースなどについて、より明確な説明
が必要と感じるメンバーも増加しているようですが、現時点で、利上げにつ
いて具体的な見通しが示せないのは、ユーロ圏、中国など世界経済全体の不
確実性に加え、「雇用」と並ぶFRBの二大責務の一つ、「物価安定」につい
て、FOMCでは向こう5年程度を見通した「インフレ関連指標」が弱含みにな
っている原因を巡り、「長期的な米国の成長期待の低下」を反映している可
能性も考えられるとして、「予断を持たずに状況を見守るべき」との意見が
多くあったからとされています。

 金融危機直後の2008年12月に、事実上のゼロ金利政策に移行するなど、バー
ナンキ前議長が打ち出した“ほぼ切れ目のない”「金融緩和」という異例の
危機対応の金融政策は、市場に安心感をもたらし米国の株式・債券市場の上
昇(株価上昇、金利低下)を演出しました。
 「量的緩和」(QE)は、QE1からQE3 まで、都合3回に及びました。2012年
9月からのQE3 では、「期限を定めず」MBS(モーゲージ債)と米国債の購入
を毎月850億ドル購入し続けることを決定しました。
 QE3の縮小開始を決定したのは2013年12月。2014年からは、FOMC開催の都
度、一定額ずつ購入額を縮小して来ていて、2014年10月に150億ドルの購入
を最後に、QEを終了しました。
 この間にFRBの総資産は、4.48兆ドル(10月24日現在。ブルームバーグ)
と金融危機以前の約5倍強の規模に膨らみました。これ程までに大きくなっ
た資産を抱えての正常化(=FRBの資産規模の適正規模への圧縮とゼロ金利か
らの引き上げ)は、細心の注意が必要で、容易ではないといわれています。
 QEの効果については諸説あり、緩和マネーが実需に見合わない水準まで拡
大し、それが証券市場や商品市場に流入し、一部の資産価格にはバブルの影
が見えるまでに値上りしたとか、新興国に流入して、新興国でバブルの兆候
が見られるなど、実体経済への効果を否定する見方がある一方で、インター・
バンク市場に信用を供与し、金利、株価、為替に好影響を与えた効果と、金
融危機後に凍り付いた経営者や投資家の心理を緩和マネーが温め続けたとい
う心理的な効果は大変大きかったといわれます。設備投資や雇用の拡大、家
計のバランスシート調整を助け、消費を刺激して米景気の回復と物価下落を
支え、1930年代の世界恐慌のような“二番底”と“デフレ”の深刻な事態に
陥ることを回避したとの評価が有力です。

 一方、10月31日、日銀は、突如、追加緩和を発表しました。“サプライズ”
で市場は大きく反応しました。
 (1)マネタリーベースの増加額拡大
  現在の年間50兆円程度から80兆円に増加するように金融調節を行う
  (30兆円増額)。
 (2)資産買入れ額拡大及び長期国債買入れの平均残存年限の長期化
  <1>長期国債を、保有残高が年間80兆円(約30兆円追加)に相当するペー
    スで買入れを実施。
    買入れた国債の、満期までの平均残存期間を7年〜10年程度に延長
    (最大で3年程度延長)
  <2>ETF及びREITについて保有残高が、それぞれ年間3兆円(3倍増)、年
    間900億円(同)に増加するよう買入れを行う。新たに、「JPX日経
    400」に連動するETFも買い入れ対象に加える。
 というもの。日銀は“切れるカード”はすべて切ったという印象です。し
かも評決では、審議委員の票は賛成・反対が4:4で同数。提案者・議長(総
裁)の1票で決まるという異例の決定になりました。黒田総裁の指導力が遺
憾なく発揮されたという見方と、一歩間違えば、総裁の信認が崩れ、日銀の
金融政策の信頼性も損なうリスクのある提案という見方が出来る決定といえ
ましょう。
 決定は、「異次元緩和:第2幕」(俗に、“黒田バズーカ2”)と呼ぶに相
応しい内容とされ、キーワードは昨年4月の決定が「2」であったのに対し、
今回は「3」。「30兆円の追加」、「ETFの3兆円買入れ」等。また、新しい
スマート指数として市場の注目度の高い「JPX日経400」連動商品を加えたあ
たり、“政権は株価を重視する”という安倍内閣との一体振りも演出して見
せたと言われています。
 総裁は11月5日の講演で、「デフレという慢性疾患を克服するには、薬は
最後まで飲みきる必要がある」と、更なる緩和も辞さない構えを見せました。

 これに前後して同じ10月31日、GPIF(年金積立金管理運用独立法人)が、
「基本ポートフォリオ」(資産構成)の見直しを発表しました。新しい資産
構成は、国内債券:35±10%、外国債券:15±4%、国内株式:25±9%、外
国株式:25±8%というもの。短期資産をポートフォリオから外し、オルタ
ナティブ(代替資産)を5%までの範囲で購入できるとしています。
 運用方針も、従来の「安全・効率的かつ確実を旨とした」から、「実質的
な運用利回り1.7%を最低限のリスクで確保すること」に変更しました。賃
金上昇率(2.6%)+1.7%が目標になりますから運用利回りは4%台を狙う
ことになり、「安全」から「リターン」へ大きく舵を切ったことになります。
株式の構成割合が、内・外合わせて50%になるわけで、従来の国債中心のポー
トフォリオで4.7%程度(東洋経済11月22日号)であったリスク(1標準偏差)
が、12.8%(GPIFプレスリリース)に拡大すると発表されています。
 世界の公的年金では類を見ない高い株式比率(内・外株式合わせて50%)
で、“不確実性”(リスク)は確実に大きくなりました。

 今回の追加緩和は、米金融緩和の終了というタイミングをとらえ、GPIFの
ポートフォリオ見直しとの“合せ技”で、株式市場に大きなインパクトを与
えることになりました。日経平均は、11月4日、取引時間中に7年振りに17000
円を超える場面(17127.66円)がありました。
 また、11月21日、中国人民銀行が基準金利の引き下げを発表しました。2
年4ヵ月振りの利下げで、企業の資金調達コストを引き下げ、不動産市場を
中心に不透明感が強まる景気の下支えを狙ったものとされています。世界経
済の不透明要因になっているユーロ圏も、ECBのドラギ総裁が「物価上昇率
の引き上げに向けて、“やるべきことをやる”」と発言したことが好感され
ました。
 これ等を受けて、NYダウは続伸し、11月21日、終値で17810.06ドルと史上
最高値を更新しました。

 日本について海外勢は、「日銀の追加緩和に驚きはなく、日本市場に対す
る投資判断に変更はない。長期的な観点からの構造改革が進んでいない(=
潜在成長率は向上していない)」との見方が多いようです。アベノミクスは
「金融緩和」、機動的な「財政政策」、構造改革による「成長戦略」という
“3本の矢”を唱え、「デフレ脱却」と人口減少の下での「潜在成長率のア
ップ」が最大の使命。海外の投資家に対し、“日本も変わる”との期待を抱
かせましたが、ここまででは「金融緩和」頼みの様相が強いようです。
 政府・当局の期待に反して、4月増税後の落ち込みからの回復は極めて鈍
い状況です。例えば10月の百貨店売上高は前年比マイナス2.2%、7ヵ月連続
の前年割れ。スーパー・コンビニもマイナスで、いずれも4月以降前年割れ
になっています。厚労省の毎月勤労統計調査では、実質賃金の伸びはマイナ
ス3%と、速報値から下方修正されています。
 4月増税後の低調な状況を見て、海外からは圧倒的に延期論が寄せられて
いるとされていました。G20ではルー米財務長官が現状での消費税の再引き
上げ、景気腰折れ懸念に言及、「補正予算による財政出動と組み合わせるな
ら増税の意味は薄れる」と批判(ロイター配信)。11月14日、サマーズ元米
財務長官も米・ウォール・ストリート・ジャーナル誌に、「日本の財政再建
にとって最も重要なのは成長率。成長が加速しなければ債務削減に取り組め
ない。消費増税の先送り決定を歓迎する」とのコメントを寄せました。11月
6日には、クルーグマン教授(プリンストン大)が、官邸で安倍首相に面談
して、消費増税の実施延期を助言。その後、「消費増税を見送ったからとい
って、日本の債務はGDP比1%も増えない」と話したとされています。首相の
経済ブレーン・浜田、本田両氏が同席したと報じられています。
 そうした中、11月17日、7〜9月期の実質GDPが発表されました。市場予想
とは正反対のマイナス0.4%(年率換算マイナス1.6%)。2期連続のマイナ
ス成長で大きなショックが走りました。内容では、個人消費が0.4%の微増。
住宅着工、マイナス6.7%。輸出、1.3%の緩やかな増加に対し設備投資がマ
イナス0.2%。更に、在庫投資が大きく予測を下回りました。その中で一番
マイナス要因に効いたのは在庫投資ですが、在庫は、調整が一巡すれば、需
要に応じて生産が拡大して行くとも考えられます。個人消費の減速が最大の
問題です。輸出は、ここへ来て、円安の効果で数量が伸び始めたかと期待さ
せる指標も見られるようになりました。日本経済が危機的というような状況
ではないとの見方が多いようです。
 来年10月からの再増税の決定時期とも重なって政権の出方が注目されてい
ましたが、2四半期連続のマイナス成長のタイミングでの増税強行は、景気
の停滞から再度デフレに陥る危険がありました。消費税の再引上げ延期、追
加緩和による株式市場の上昇による資産効果、補正予算編成とセットで衆議
院の解散に踏み切りました。首相は、自ら“アベノミクス解散”と呼んでい
るようですが、アベノミクス(本質は、インフレ政策という意見も多い)に
対する信任投票ともいえる選挙になりました。
                          (11月25日 記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
 確定拠出年金加入者平均利回り過去最高の3,59%
  ――「年金情報」調査

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・AFP            植村昌機
 ◇◆◇
 「年金情報」が大手金融機関3社(みずほ銀行、日本確定拠出年金コンサ
ルティング、野村証券)の加入者について、2014年9月末時点の加入者187万
6888人の通算運用利回りを集計した。この調査は、確定拠出年金の加入者全
体(8月末、厚生労働省速報値約502万6000人)の37.5%をカバーしている。

 1. 平均運用利回りは3.59%、過去最高を更新
 内外株式相場が好調に推移し、為替も大幅に円安となったためで、リスク
資産を組み入れて運用する加入者の利回りが上昇した。1年前の2013年9月調
査では、日経平均14,466円、ドル円99.28円、平均利回り3.54%。今回は日
経平均16,173円、ドル円107.24円、平均利回り3.59%で、過去最高を更新し
た。確定拠出年金は、運用商品が限定されているので分散投資に限界があり、
国内株式や為替の変動などが利回りに反映されやすい。また、資産規模が小
さいので企業の掛け金や制度移換金の流入時に相場が変動すると運用利回り
に大きく影響する。

 2. 確定給付企業年金の利回りは3.43%
 確定拠出年金の利回りが確定給付企業年金の利回りを上回っている。確定
拠出年金の場合は国内株式投信による運用収益分が大きく、一方、確定給付
企業年金は株式の組み入れ比率を下げていて、相場下落の影響を受けない体
制をとっているためと思われる。利回りの差が大きく出るのは、相場が下落
した局面で、確定給付企業年金はヘッジファンドや債券の割合を大きくして
分散投資を進めリスクを抑制していることもあり、相場の影響を受けにくい
面がある。確定拠出年金は、運用商品が限定されるので分散投資に限界があ
り、相場が下落したときに大きく利回りを押し下げる傾向にある。

 3. 98.6%の加入者がプラス利回りに、「1%未満」が43%、想定利回り達
成は45%
 対象加入者187万人のうち185万人が元本確保になり、全体の98.6%に達し、
過去最高だった2013年3月末の95.6%からさらに改善した。
 利回りがプラスの加入者のうち、80万人が「0〜1%」の利回りで、全体の
43%を占める。これらの加入者の多くが元本確保型商品のみで運用している
と考えられる。
 多くの企業が設定している想定利回り「2%」を達成している加入者は79
万6019人で、全体の45.2%となった。目標とする金額が達成できているのは
全体の2人に1人ということになる。なお、「10%以上」の加入者は18万人で
全体の1割弱となる一方、ゼロを下回り元本確保していない加入者は2万5778
人となり、全体の1.4%まで縮小した。

 4. 運営管理機関3社の利回り、2.73%から4.38%
 3社のうち最も平均利回りが高かったのは4.38%で、リスク商品を組み入
れている加入者が多くまた、株式相場が低迷していた時期に導入する企業が
多かったためと思われる。最も低い利回りの運営管理機関は2.73%で、利回
り「ゼロから1%」に利回りが集中していて、元本確保商品のみで運用して、
株式相場の実績の影響を受けていない加入者が多かったことによると考えら
れる。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■年金相談の現場から(37)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 公的年金等受給者の扶養親族等申告書について
   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 今年も例年と同様、以下の年金額を受給されている人に対して、日本年金
機構から「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」(以下「扶養親族等申
告書」という)が送付されていますが、もう提出されましたでしょうか。

 【扶養親族等申告書が送付される人の年金額の基準】
 ・65歳未満の人の場合:年額 108万円以上
 ・65歳以上の人の場合:年額 158万円以上

 ところで、老齢年金にも、所得税法の規定により、雑所得として所得税が
課税され、支払期ごとに源泉徴収されて支払われます。(障害年金・遺族年
金は非課税のため所得税はかかりません)
 ただし、その年に支払いを受ける年金の額が、65歳以上の人は158万円未
満、65歳未満の人は108万円未満の場合、所得税が源泉徴収されませんので、
扶養親族等申告書は送付されていません。
 すなわち、上記の基準の年金額以上の人に対して、扶養親族等申告書が毎
年10月下旬ごろに送付されているのです。
 そして、必要事項を記入して提出することにより、翌年の2月支払期から
控除後の課税対象額により、源泉徴収された年金が支払われます。
 また、年金における諸控除の対象となるのは、公的年金等控除と扶養親族
等の控除で、これらの控除を受けるために、扶養親族等申告書の提出が必要
となるのです。

 ところで、この扶養親族等申告書を日本年金機構に提出しなければ、どう
なるのでしょうか?
 それは、以下の税額算出式のごとく、提出した場合と提出しなかった場合
で源泉徴収される税額が異なってきます。

 (1) 扶養親族等申告書が提出されている場合
 源泉徴収税額=(年金支給額−社会保険料−各種控除額)
                       ×5.105%(合計税率)
 (2) 扶養親族等申告書を提出していない場合
 源泉徴収税額={年金支給額−社会保険料−
      (年金支給額−社会保険料)×25%}×10.21%(合計税率)

  *1 65歳未満の人は、年金から社会保険料控除されないため、
     上記社会保険料の控除金額は”0”となります。
  *2 各種控除とは、公的年金等控除と扶養親族等控除です。
     社会保険料とは、年金から源泉徴収された介護保険料および国民
     健康保険料(または後期高齢者医療保険料)の合計額です。
  *3 平成25年から復興特別所得税が創設され、源泉徴収される所得税
     の2.1%相当額が、所得税の源泉徴収の際に併せて徴収されていま
     す。

 例えば、63歳の男性(妻:配偶者控除適用)が月額15万円の年金を受給し
ていた場合の源泉徴収税額は、以下の通りとなります。
 ・扶養親族等申告書が提出されている場合 → 税額:月765円
 ・扶養親族等申告書を提出していない場合 → 税額:月11,486円
 なんと、扶養親族等申告書を提出した場合と、しなかった場合で、月額約
10,721円、年額にすると約13万円の差が生じます。

 それでは、この約13万円はどうなるのでしょうか?
 このような場合、後で日本年金機構へ扶養親族等申告書を提出することに
より、その後の支払期に徴収しすぎた税額が返還されます。
 あるいは、翌年に確定申告(2月16日から3月15日まで)を行えば還付され
ます。
 すなわち、後で税額の精算を行うことができますので、何ら支障はないと
思いますが、できれば毎年、扶養親族等申告書を提出しておく方が問題は起
きにくいので、キッチリと提出されることをお勧めします。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOアクティビティー
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
出版のお知らせ―――――――――――――――――――――――――――
 ◇◆◇
 《最新版・2014年版》平成26年2月28日発売!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2014年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
  共編
 A4判・136頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から10年以上が経過し、この
間、退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金
の代行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進
行してきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も個人資産の運用難による目標金額の未達成、投資教育の内容・頻度、
運用商品開発の不足等、課題が発生しています。さらに、厚生年金基金改革
法が2014年4月に施行され、解散や移行先制度の検討等、企業年金の再編は
第2のステップに入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で10冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆、IFRSの概要、厚生年金基金改革と労働組合の
対応、年金ガバナンス体制の見直し・強化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 《最新版発売中!!》平成26年5月30日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)
 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 平成24年5月31日発行
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 本ハンドブックは、施行13年目を迎えた確定拠出年金制度が法律制定の趣
旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の一
翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加入
者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私たち
の活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理を
行いました。
 第I部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第II
部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提言、
第III部は制度の課題と展望について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、マッチング拠出等
が認められた法改正に対応し第3版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 書籍のお申し込み、お問い合わせ、ご質問、ご相談、研修会講師派遣のご
要望等ございましたら、下記までご連絡をお願い申し上げます。
 内容詳細は下記のURLをご覧ください。
 →http://kinyunenkin.jp/09syuppan.htm
 お問い合わせ、お申し込みは
 NPO金融年金ネットワーク事務局(
 または電話(03-5444-0539)、FAX(03-5444-0303)まで。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
●次号(第129号)は2015年1月5日に送信の予定です。
【NPO金融年金ネットワーク・メールマガジン】
 企画・編集・発行:NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 協力:(株)格付投資情報センター
【メールアドレスの変更および配信中止/バックナンバー閲覧】
 → http://kinyunenkin.jp/08mailmaga.htm
【内容に関するご意見・ご感想】
本メールの送信アドレスは送信専用ですので、直接ご返信になることはでき
ません。ご意見・ご感想等は、下記アドレスまでお願い致します。
 → 
※禁・無断転載 このメールマガジンの著作権は上記発行者に帰属します。


ホームへ メールマガジン登録