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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                     第135号 2015年7月1日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
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■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(118)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(9)
  ポートフォリオの考え方(3)
 ★マーケットトピックス
  米利上げは、年1回か 日本株、15年ぶり高値更新
 ★年金トピックス
  確定拠出年金加入者の通算利回り平均4.8%
   ――「年金情報」調査から
●年金相談の現場から(44)
  年金加入記録判明により年金額が減ってしまう事例
●NPOアクティビティー
出版のお知らせ
◇最新版・2015年版 平成27年1月30日発売!
 好評4月7日増刷出来!
「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2015年版
◇最新版好評発売中!! 平成26年5月30日発売! 残部僅少!
「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(118)
                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 都内のある総合型厚生年金基金は、数回にわたり理事会、代議員会で話し
合った結果、代行資産を返上し、確定給付企業年金基金として継続する方針
を決めた。また、予定利率や給付利率等の数字は引き下げること。新規の受
給者は終身年金ではなく有期とすること、なども決定している。解散ではな
く単なる代行返上を選択するということは、受給者対する加算年金の給付を
継続するということを意味する。もちろん給付利率も引き下げるので給付は
減額となるが、既存受給者について「終身給付」は守られるというものだ。
総合型厚生年金基金の何割かは後継制度として残るだろうが、この手の代行
返上はおそらく少数だろうから、関係者に対しては頭の下がる思いだ。
 その基金を先般、挨拶回りで数ヵ月ぶりに訪ねた時の話である。
 順調に移行作業が進んでいると思っていたが、最近ある加入事業所が某コ
ンサルティング会社を同行させ、「できうる限り早期の解散」への方針変更
と「後継制度への移行を辞退する」事業所としての方針を通知してきたそう
だ。全事業主間でコンセンサスを取りながら少しずつ、ここまで前進してき
たプロセスを、巻き戻せということだ。どうやら、コンサルタントの助言で
会社としての方針を変更させたらしい。
 代行返上して全ての加入事業所が後継制度に移行するという基金の方針で
は、その制度を抜けるには一事業所として「任意脱退」するしかない。しか
し、任意脱退は規約により「特別掛金」を一括で支払うという負担が必要と
なる。だが、解散となればどうか。最終的には代行返上と同じく、代行資産
は国に返上されるとともに、あとに残った資産は関係者に一時金で配分すれ
ばそれで終わりである。その時点の積立不足分を必ずしも穴埋めする必要は
ないのである。余計な出費を抑えられるから、そのために手のひらを返して
解散を迫る。さらにいえば、どうせするならひと月でも早く解散をして、特
別掛金・加算掛金の支払いを一刻も早く逃れたい。こういう算盤勘定なので
ある。
 解散するにしろ代行返上するにしろ、必ず加入員や受給者等の諸々の加入
記録を国と照らし合わせるという重要なプロセスを経なければならない。こ
の部分をしっかりしなれば、いかに加入員や事業主の同意をとり、代議員会
で決議をしても、厚労省は解散を認可しないだろう。そしてその記録確認作
業には、順調にいったとして1年半前後の時間がかかる。そこを焦って瑕疵
があったために解散認可を受けられない事態になっても、部外者であるコン
サルティング会社が責任を取るわけがない。正直言って、助言をあてにする
事業主の見識に疑問を感じざるを得ない。また例えば、終身給付が続くゆえ
に給付減額に同意した受給者からみれば、加算年金給付継続の方針が一時金
清算による解散に転換されたら、当然ながらそこに大いなる悪意を感じるだ
ろう。
 訪ねた基金の常務理事は、「代議員会で機関決定しているのだから」とい
う理由で突っぱねたというが、他のいくつかの基金にも打診をし、実際に内々
定の方針を転換させた事例があるという。厚生年金基金制度がソフトランデ
ィングを模索している中で、とんでもない火事場泥棒ビジネスのあだ花が咲
いているようだ。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOトピックス
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★今からでも聞いてみよう投資の話(9) ――――――――――――――――
 ポートフォリオの考え方(3)

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 前月号に続き、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の話をします。
GPIFが昨年10月に2015年度からの第3期中期計画に先駆け、基本ポートフォ
リオの変更を発表した。実務的には今年の10月から移行する。GPIFを含む公
的年金基金の改革は、2013年の「日本再興戦略」の中で言及されたことから
始まりました。ただ、その具体的な運用政策もしくは運用方針については賛
否が分かれているようで、なかでもポートフォリオ改革が身近な問題として
これまでも関心が高かった。有識者会議によるGPIFでのポートフォリオ改革
の主な目的は、国内債券の保有比率の引き下げだったと言われる。その背景
には、利回りの低下、将来評価損失が発生する可能性、他の資産クラスをう
まく組み合わせることで、リスク軽減が可能、などが指摘されている。ポー
トフォリオのさらなる高度化のためにオルタナティブ(代替)資産への投資
も提言された。海外の年金基金がこうしたオルタナティブ資産を積極的に活
用しているためである。昨年10月に発表された基本ポートフォリオの構成割
合をおさらいしておくと、国内債券が60%から35%へと引き下げられ、国内
株式と外国株式は12%から25%に、外国債券は11%から15%へと引き上げら
れた。細かくは各資産には併せて乖離許容幅も設定されている。

 こうした変更はポートフォリオのリスク管理が難しくなり、高度な資産運
用を実行しなければならなくなるために、ガバナンス(統治)改革も併せて
必要だとも提言されている。つまり公的年金運用改革は国内債券の保有圧縮
と高度な資産運用を支援するガバナンス体制整備が大きな2つの柱と言うこ
とです。こうした改革は海外の年金基金の動向をもにらみながら、今後軌道
修正されていくことも考えられます。ところで改めてオルタナティブ投資と
はどういうものかと言うと、身近なところでは不動産、公共インフラ、未公
開企業、などへの投資があります。これらは長期投資の対象となる資産で、
安定的な収入が得られるとか、少ない投資で大きなリターンが得られるもの
と位置づけることができます。各々に投資リスクがありますから、適切な投
資判断によってより好ましい結果がもたらされるよう戦略や人材が必要であ
り、そこにはしっかりしたガバナンスのあり方も問われることになります。

 有識者の話では、「現在130〜140兆円あるGPIFの積立金から毎年給付に5兆
円の支出超過があるとすれば、26年で積立金はなくなる。年金生活者はリス
クのないもので運用してほしいと思う一方で、支える次の世代に資産を残す
ためには名目で4%程度の利回りを確保しなければ100年間安心にはならない。
世代間対立の調整が必要。」としている。

 さてまとめですが、GPIFを代表とする公的年金基金では長期的に年金給付
を継続するために、運用による資産積みあげが重要な使命でもあります。し
たがって、その運用政策やガバナンスのあり方は大変重い取り組みと言える
でしょう。今回のGPIFの運用政策の変更にはこうした背景があることを知っ
たうえで、各年金基金の財政状況や母体企業の経営状況を考慮し、GPIFの運
用政策を参考にすればよいでしょう。だからと言って基本ポートフォリオの
資産配分がGPIFと同じである必要はないし、GPIFの考え方が海外の年金基金
と比較して良いとの実績もまだ出ていない。ましてや個人の確定拠出年金に
当てはめると、個人の人生設計による資金の収支や将来老後に必要な蓄えな
どは人によって異なりますから、他人と同じ資産構成にする必要はありませ
ん。個々に将来に必要な資金をどのようにして確保していくのかと言うこと
が重要で、そのためにどのような運用方針を立てるかと言うことにより時間
を割くことの方が大切だと考えます。
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 米利上げは、年1回か 日本株、15年ぶり高値更新
                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 米経済は、厳冬や西海岸の港湾ストなどサプライチェーンが分断された影
響による1〜3月期の低成長からは、ドル高にも拘わらず「緩やかに持ち直し
て」おり、6月16・17日に開催されたFOMC(公開市場委員会)の声明、及び
イエレン議長は記者会見で、「4月の前回会合以来、雇用増加のペースは上
向き、労働市場の伸びは一段と改善した」と説明し、「政策金利(FF金利)
の目標レンジの引き上げが適切になると見込んでいる」と述べました。
 FOMCメンバー17人中15人が「年内に利上げを開始すべき」との考えを持っ
ていること、また、メンバーが示した政策金利の予測(ドット・チャート)
によると、2015年末に0.625%へ上昇という見通し(中央値)は変えなかっ
たので、FF金利が現在0〜0.25%であることを踏まえると、年内に0.25%の
利上げが2度あることを示唆していて、9月の利上げ開始を濃厚とみているこ
とが読み取れます。但し、7人が年内1度の利上げ、又は年内の利上げ見送り
を支持していることも明らかになりました。
 同時に明らかになった16年末予想は1.625%、17年末も含め金利見通しは
いずれも引き下げられていること、イエレン議長のコメントに「労働市場の
改善は大きく前進した」とする一方で「委員会は労働市場の一層の進展を示
す証拠を望んでいる」と慎重な発言もあること等から、年内に最初の利上げ
は行うが、その後のペースはゆっくりしたものになるというのが市場の受け
止めで、株式市場、債券市場とも価格を戻しています。
 それでも、IMFはドル高・新興国通貨安による新興国経済への悪影響を懸
念していて、ラガルド専務理事は「米利上げは2016年の早い時期が望ましい」、
「為替市場でドルが過大評価されている。ドル高の長期化は米経済へのリス
ク。影響を甘く見るべきでない」と発言、FRBは、金融政策の決定にあたっ
て、他国への影響をも考慮せざるを得ない難しい選択が迫られています。
 今回興味深いのは、グリーンスパン元議長時代の2004年6月から2006年ま
で、FOMCの1会合おきに、1回に0.25%ずつ連続17回きっちりと利上げを行い
(次の利上げを予想させ、事前に織り込ませてから利上げをするので、“市
場に優しい”、“絶妙のコントロール”と絶賛された)1.00%から5.25%ま
で利上げを行ったような「機械的な手法は絶対にとらない」と述べ、「過去
を振り返ると04年から06年の局面では、より速く、そしてより多くの利上げ
をした方が望ましかったかもしれない」とコメントしたことです。
 「利上げは経済指標次第」という従来からの発言と合わせ、FRBの利上げ
と資産縮小に向けた“手綱捌き”に注目が必要です。

 ユーロ圏は、ECBの量的緩和や原油価格の底入れなどから5月の消費者物価
指数が6ヵ月ぶりに前年同月比で上昇、ECBは2015年の見通しを従来の「横這
い」から「前年比0.3%の上昇」に変更するなど改善に向かっていました。
ECBのドラギ総裁は2016年9月まで量的緩和政策を完遂すると強調、デフレリ
スクの減退と共に、2015年の成長率見通しがOECDの見通しで2.1%と回復軌
道に乗り始めました。ところが、月末になってギリシャ問題が大きく吹出す
ことになりました。27日、緊急のユーロ圏財務相会議が開かれました。しか
し、ギリシャ側が求めていた追加の救済プログラムの延長は拒否。ギリシャ
のツィプラス首相が、現行の救済プログラムが切れた後の7月5日に国民投票
の実施を発表したこともあって、これまで、最終的には決着するとの期待が
あった市場に対して、週末に、何等かの別の材料が市場力学を大きく変えな
い限り、週明け29日の市場は大きく揺さぶられる可能性があります。ユーロ
圏各国財務相は、ギリシャ救済の取り組みを棚上げして自国への悪影響の抑
制に動いているとされ、ギリシャ政府が、自国の銀行を守るための措置が必
要と指摘していて、ECBは28日、ギリシャの銀行向けの緊急流動性支援(ELA)
を停止するかどうかを協議するといわれています。

 日本株市場は、日米の景気回復や企業業績拡大、ギリシャ問題がデフォル
トなど深刻な事態に発展するとの警戒感が和らいだこともあって6月24日、
日経平均が続伸して終値で20,868.03円を付けて、2000年4月のITバブル最中
の高値20,833円を約15年ぶりに更新しました。
 世界的な金融緩和競争で、債券価格は既にバブルともいえる状況で日本の
10年国債は、15年1月に0.195%、独10年国債も15年4月に0.049%という歴史
に残る低金利(債券価格は高値)をつけています。日本市場では、5月後半、
ヘッジファンドの「円売り・日本株買い」で、日経平均が12日間連続して上
げ続けた記憶は新しいところです。しかし6月に入ってからは一変して、現
物・先物とも大幅売り越しになり、日経平均は少し調整しました。しかも、
6月1〜18日の間(14営業日)に、日銀は8日間、合計で2951億円のETF買いを
実施していて、ヘッジファンドなどの利益確定売りに日銀が買い向かって相
場を支えている構図が浮かび上がります。ブルームバーグの記事によると、
GPIFが新しい資産構成の目標値に向けて進めてきた国内債券(主に国債)の
残高圧縮と内外株式などの積み増しは最終段階に近付いた可能性があり、今
後は、共済年金(運用資産、約30兆円)が追随することになると報じられて
います。共済年金には地方自治体が独自に運用する各種年金も21兆円あり、
運用資産合計は約51兆円になり、これ等がGPIFの資産構成に追随し、利回り
目標やリスク許容度なども共有することになります。
 従って、日本株市場には、強力な買い手が存在することになり、彼らは安
心してポジションを組むことが出来るでしょう。年金資産に“ツケ”が回ら
ないことを願うばかりです。
                        (平成27年6月28日記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
  確定拠出年金加入者の通算利回り平均4.8%
   ――「年金情報」調査から

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・AFP            植村昌機
 ◇◆◇
 「年金情報」が、確定拠出年金(以下DC)の加入者が多い大手運営管理機
関4社(三井住友信託銀行、みずほ銀行、日本確定拠出年金コンサルティン
グ、野村証券)に15年3月末までの運用利回り(通算利回り:企業がDCを導入
し、従業員が加入してからの利回りを年率計算)を集計してもらったところ、
平均利回り4.80%に達し、過去最高を記録した。国内外の株式や債券市場が
堅調に推移し、投資信託で運用する加入者の利回りが全体を押し上げた。集
計対象は、291万3923人と加入者507万人の57%をカバーしている。

 1. 利回りプラスは全体の99%だが、1%未満が38%。
 利回りがプラスになった加入者数は288万人で全体の99%。しかし、ゼロ
から1%未満が38%で、定期預金のみで運用していると思われる加入者は112
万人に及ぶ。相場環境に関係なく常に4割前後の加入者がこの範囲に存在す
る。一方、10%を超える利回りを確保している加入者数は52万人と18%に達
した。運用に無関心な加入者と過度にリスクを取っている加入者が混在する
状況となっている。

 2. 制度の平均想定利回り2%に達していない加入者は44.9%。
 想定利回り以上で運用できないと目標の退職金額に到達しないことになる。
2009年3月では2%に達している加入者が0.4%であったことをみると劇的に
改善しているが、一方でまだ約半数の加入者が目標額に未達となっている。
分散投資を実行して安定的に2%程度の利回りを確保することが求められる。

 3. 運営管理機関ごとでは3〜6%台。
 運営管理機関ごとでは平均利回りは4社ともプラスだったが、3〜6%台に
ばらついた。投資信託の保有者割合が異なるため、運用成績に差が出た。最
も高い運営管理機関は6.39%、次に5.02%、4.48%、3.3%であった。最も
低い運営管理機関では、「ゼロ〜1%」に56.4%と集中していたのが特徴と
なっている。運営管理機関によって利回りで倍の格差が出た。

 4. DC利回りがDB(確定給付企業年金)を2期連続で上回った。
 DCが2012年9月末までDBを下回っていたが、その後2013年はDBを上回り、
2014年3月にDBを下回っていた。しかし、2014年9月でDBを2期上回った。相場
環境が上昇局面ではDCの方が利回りが高いが、下降局面ではDBの方が高い傾
向にある。DBは株式や債券に分散投資していて、DCより相場変動を受けにく
い。一方、DCでは全額を投信など偏った運用をする加入者がいる半面、全額
を定期預金とする加入者も混在している。
 しかし、2014年4月から15年3月の単年度でみると、DBが10.75%、DCが7.58%
と3.17%上回っている。
 ◆◇◆

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┃ ■年金相談の現場から(44)
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 年金加入記録判明により年金額が減ってしまう事例
   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 「ねんきん特別便」などで年金の加入記録が判明した場合、年金額が増え
るケースが一般的ですが、年金の制度・しくみは非常に複雑・難解で、ケー
スによっては減ってしまうこともあります。
 そのため、新たな年金加入記録が判明したような相談を受けた場合、あま
り年金額が増えることに対して強調しすぎると、後で減ってしまうことが分
かった時に、相談者はガッカリされることになります。また、その反動がこ
ちらサイドに降りかかってきて、「あなたは、年金額が増えると言ったのに!」
と抗議を受けることにもなりかねません。相談者のためを思ってお話しした
ことが、かえって不信感を持たれてしまいます。そのためには、年金の加入
記録が判明した場合、年金額が増えることもあれば、減ることもあるという
ことを、いつも意識しておく必要があるのです。

 ところで、この年金額が減ってしまう事例としては、以下のようなケース
があります。

 障害厚生年金の受給権者に過去の厚生年金保険の加入記録が判明して年金
額が減ってしまうケースです。
 障害厚生年金の年金額は、障害認定日において厚生年金保険の加入期間が
300ヵ月未満の場合、「300ヵ月加入したものと見なす」という特例がありま
す。
 この300ヵ月みなしの年金を受給している人に過去の厚生年金保険の加入
記録が判明し、その加入記録の標準報酬月額が今まで受給していた障害厚生
年金の平均標準報酬月額より低い場合、年金額が減ってしまいます。
 その理由は、年金額の算定は、平均標準報酬月額×給付乗率×加入期間で
計算されるのですが、判明した加入期間を追加しても計算の基礎となる加入
期間は同じ(300ヵ月)にもかかわらず、平均標準報酬月額のみ減ってしま
うため、年金額が減ってしまうのです。

 次に同じような仕組みによるものですが、遺族厚生年金の受給権者(妻)
の配偶者(夫)の過去の厚生年金保険の加入記録が判明して年金額が減って
しまうケースです。
 このケースも配偶者(夫)が在職中に死亡したような場合、死亡日におい
て厚生年金保険の加入期間が300ヵ月未満の場合、やはり「300ヵ月加入した
ものと見なす」という特例があります。
 このため、この300ヵ月見なしの遺族厚生年金を受給している人の配偶者
(夫)の過去の厚生年金保険の加入記録が判明し、その加入記録の標準報酬
月額が今まで受給していた遺族厚生年金の平均標準報酬月額より低い場合、
年金額が減ってしまいます。

 このほか、以下のようなケースにおいても、年金額が減ってしまうことが
あります。

 第4種被保険者期間を有する人で、新たな厚生年金期間が判明し、第4種期
間が取り消されるケースです。
 第4種被保険者とは、昭和61年3月以前において、厚生年金保険の受給資格
期間の20年を満たせず退職した場合において、年金の受給資格期間を満たせ
るまで、厚生年金保険に任意で継続して加入することができた制度です。
 そして、この場合も、過去の厚生年金保険の加入記録が判明し、その加入
記録の標準報酬月額が第4種被保険者期間の標準報酬月額より低い場合、年
金額が減ってしまいます。
 その理由は、年金の受給資格期間を満たせるまで、厚生年金保険に加入で
きるため、新たな厚生年金期間が判明した月数分、第4種期間が減らされる
ことになります。なお、その減らされた月数分の第4種期間にかかわる保険
料については、還付されることになります。
 すなわち、平均標準報酬月額×給付乗率×加入期間で計算される加入月数
は同じであるにもかかわらず、平均標準報酬月額は減ってしまうため年金額
が減ってしまうのです。

 ところで、以上のように年金額が減ってしまうケースでは、現在の年金事
務所の取扱いでは、年金加入記録を追加して計算するかどうかを本人が決め
ることができるようになりました。そのため、本人が減額されることを、申
し出ない限り、年金額が減ることはありません。
 しかしながら、年金額が増えると思ったにもかかわらず、増えないことが
分かった時の気持ちは何とも言えません。このようなことにならないために
も、以上のことを意識しながら相談者対応することを心掛けています。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOアクティビティー
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
出版のお知らせ―――――――――――――――――――――――――――
 ◇◆◇
 《最新版・2015年版》 平成27年1月30日発売!! 好評 4月7日増刷出来!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2015年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
  共編
 A4判・138頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から10年以上が経過し、この
間、退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金
の代行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進
行してきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も個人資産の目標金額未達成、投資教育の内容・頻度、運用商品開発の
不足等、課題が発生しています。さらに、厚生年金基金改革法が2014年4月
に施行され、解散や移行先制度の検討等、企業年金の再編は第二のステップ
に入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で11冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆、IFRSの概要、厚生年金基金改革と労働組合の
対応、年金ガバナンス体制の見直し・強化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

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 《最新版発売中!!》平成26年5月30日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)
 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 平成24年5月31日発行
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 本ハンドブックは、施行13年目を迎えた確定拠出年金制度が法律制定の趣
旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の一
翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加入
者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私たち
の活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理を
行いました。
 第I部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第II
部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提言、
第III部は制度の課題と展望について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、マッチング拠出等
が認められた法改正に対応し第3版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 書籍のお申し込み、お問い合わせ、ご質問、ご相談、研修会講師派遣のご
要望等ございましたら、下記までご連絡をお願い申し上げます。
 内容詳細は下記のURLをご覧ください。
 →http://kinyunenkin.jp/09syuppan.htm
 お問い合わせ、お申し込みは
 NPO金融年金ネットワーク事務局(
 または電話(03-5444-0539)、FAX(03-5444-0303)まで。

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●次号(第136号)は8月3日に送信の予定です。
【NPO金融年金ネットワーク・メールマガジン】
 企画・編集・発行:NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 協力:(株)格付投資情報センター
【メールアドレスの変更および配信中止/バックナンバー閲覧】
 → http://kinyunenkin.jp/08mailmaga.htm
【内容に関するご意見・ご感想】
本メールの送信アドレスは送信専用ですので、直接ご返信になることはでき
ません。ご意見・ご感想等は、下記アドレスまでお願い致します。
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