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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                     第136号 2015年8月3日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(119)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(10)
  ポートフォリオの考え方(4)
 ★マーケットトピックス
  ギリシャは決着、中国は? 米利上げは9月の可能性も
 ★年金トピックス
  第3の企業年金創設、企業で運用し給付は変動
   ――オランダのCDC制度を参考に導入
●年金相談の現場から(45)
  被用者年金制度の一元化について(パート1)
●NPOアクティビティー
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┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(119)
                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 先々月の稿で、厚生年金基金が一度解散し、新制度を受給者抜きで発足さ
せると、特別掛け金の負担が激減すると書いた。今月はこのあたりについて
少し説明したいと思う。
 およそ確定給付であれ確定拠出であれ、事前積立方式の年金制度について、
その基本的財政構造を、誤解をおそれずに最も簡便な式に表わせば下記のよ
うになる。

  掛金+運用収益(予定利率)=年金給付

 上記の右辺を固定すると考えれば、それは確定給付型であり、運用収益の
変動で掛金が上下する。また左辺の掛金を固定すれば、それは確定拠出型で
あり、運用収益の変動で
 年金給付が上下する。留意が必要なのは、左辺の部分。例えば20歳から40
年加入して60歳から年金をもらう確定給付制度の場合、左辺の掛金は加入員
が60歳になるまでの拠出であるが、運用収益はそれ以降の分も予定されてい
る点である。
 簡便な年金制度で説明しよう。仮に、60歳から毎年1回、本人の誕生日に1
万円の年金が支給される制度があるとする。60歳の第1回の給付時に、総額
でいくら資金があればよいのだろうか。例えばこの間、金利ゼロの預金で保
管するならば、1万円×5回=5万円の積立金がなければならない。しかし、
毎年2%の運用益(税金等は省略)を見込んだ制度ならどうだろう。第1回の
給付時に、翌年の給付に必要な原資は、1年後の給付額1万円を予定運用収益
の2%で割り引いた金額である。つまり1万円÷1.02=9,804円である。2年後
の第3回目の給付1万円はさらに2%割り引くので9,612円、以下同じように計
算すると第4回目の1万円は9,423円、第5回目の1万円は9,238円である。以上
の金額の総額は48,077円で、予定運用収益が0%の場合の50,000円に対して2,
000円近く少ない金額で年金が賄えるということになる。予定運用収益を5.5
%とすれば、同様の総額は約45,000円である(下表参照)。

n年後の1万円の現在価値(単位円)
       |今 年| 1年後| 2年後| 3年後| 4年後| 総 額|
予定運用益 0%|10,000|10,000|10,000|10,000|10,000|50,000|
予定運用益 2%|10,000| 9,804| 9,612| 9,423| 9,238|48,077|
予定運用益5.5%|10,000| 9,479| 8,985| 8,516| 8,072|45,052|

 これらの金額は、予定運用収益が見込める前提で、積み立てておくべき金
額なのだから、必要な資産額であるとともに年金債務の金額であるとも解釈
できよう。
 さて、ではもし運用がうまくいかなければどうなるか。奇妙な前提である
が全期間運用益が0%であり続けたら、上記の表の総額の差だけ追加拠出が
必要になる。さらにはもし運用収益がマイナスになれば、その追加負担額は
より拡大する。しかも予定運用収益が高いほど、ハイリスク運用を志向する
ので、目論見が外れた時の追加負担もより大きくなりやすい。
 総合型厚生年金基金の場合、その大半の予定利率は5.5%前後に高止まり
して今日を迎えている。ITバブルがはじけたあとの運用不振、サブプライム
やリーマンショックによる混乱などで、運用収益が大きくマイナスに毀損し
た。これらの傷は1年やそこらで埋めきれるものではないため、長期の追加
ローンとして特別掛け金を手当てしていたのである。そして確かに、アベノ
ミクス等による株高円安で財政状態は好転した。だが追加負担分を棒引きに
するほどの改善をみせている効果ケースは稀である。
 できるだけ多くの事業所に新制度への移行を選択して貰うために、事業主
負担をできるだけ抑制する。そのための苦渋の選択が受給者との手切れであ
る。
 ◆◇◆

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┃ ■NPOトピックス
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★今からでも聞いてみよう投資の話(10)――――――――――――――――
 ポートフォリオの考え方(4)

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 前回の公的年金の運用改革と比較して、企業年金は一歩先んじた形で進行
していると思っています。例えばオルタナティブ投資については一般的とな
りつつあり、パッシブ運用の採用にも変化が見られている。先進的な企業年
金ではさらに抜本的な見直しが進められており、投資目的に沿ったポートフ
ォリオの模索も見られ、単純に伝統的4資産の構成と言う考え方ではなくな
ってきている。これは従来型年金運用が転機を迎えたためであり、市場の変
動リスクを高めれば長期的に良好なリターンが享受できるという単純な考え
では、満足した運用成績が得られなくなってきたことを意味している。他に
技術的な課題も提起されている。例えば、年金基金が政策アセット・ミック
スや資産のベンチマークを厳格に順守しようとすると、投資機会を逃してし
まうという弊害があった。このように年金運用において、先進国の株式や債
券が主体の構成であること、時価総額加重インデックスを偏重していること、
政策アセット・ミックスを堅持すること、などの従来の枠組みに疑問が生じ
てきた。リスク管理が難しくなった現在の運用環境下では、こうした課題の
克服とともに人材を中心に運用体制の整備・充実を図るべきとの声も高まっ
てきている。
 なお、参考のためにGPIFと企業年金連合会が公表している2014年度末の運
用資産構成比は次の通りである。なおカッコ内は2013年度末。数値は順に国
内債券、国内株式、外国債券、外国株式の順で数値は丸めている。GPIFは39
%(60%)、22(14)、13(9)、21(12)、他5(5)、企業年金連合会で
は42%(39%)、17(13)、13(22)、29(26)。両者間では債券の構成比
の年度変化が異なっている。
 さて前述した投資目的に沿ったポートフォリオとは、投資目的を明確にし
た資産クラスを対象としたその構成を言う。三菱UFJ信託銀行では「目的別
ポートフォリオ」と名付け、提唱している。同行では「投資目的別の資産ク
ラスを持つことで、資産クラス単位で安定運用、収益の追求、負債リスクへ
の対応、給付への対応、といった投資目的を明確にすることができる。」と
している。すなわち、国内債券などは安定した収入ととらえる、株式などは
成長による収益機会を獲得する、株式については先進国にとどまらず新興国
も加え、リート、非上場株式、なども選択肢の一つである。ちなみに、GPIF
は2014年度末でオルタナティブ投資はほぼゼロであった。インフラ投資ファ
ンドに55億円程度の資産を保有しているに留まっている。
 整理も兼ねて再度基本に戻ってみましょう。年金運用はリスクを抑えるこ
と、リターンを追及すること、に大きく集約できる。つまり安定運用部分と、
収益追求部分に分け、それをさらに細分化していけばよい。安定運用部分と
しては債券、ローン、生保一般勘定、など。収益追求部分では株式、ヘッジ
ファンド、不動産、インフラ、などがある。こうした基本を踏まえ、個々の
基金において財政状況を考慮しながら、基本ポートフォリオを設定すること
になる。これまでで企業年金基金が考えている年金資産の運用の一端を見て
きたつもりですが、まだまだ進化することになるでしょうし、不足があれば
時期を見て追加させて頂きます。
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 ギリシャは決着、中国は? 米利上げは9月の可能性も
                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 6月後半になって、最終的には決着するとの期待があったギリシャ問題が
大きく噴き出すことになりました。ギリシャの政府債務は、前回の危機の際
に、民間保有分も含め債務再編がおこなわれています。加えて、EUも大手銀
行の監督がECBに一元化されていて、「包括査定」(ストレステスト)やESM
(欧州安定メカニズム)等セーフティネットの整備が進んでいます。前回の
危機では、財政の脆弱なポルトガル、スペイン、イタリア等に連鎖するリス
クが懸念されましたが、今回は、10年国債の金利もCDSスプレッドも通常の
水準に落ち着いていました。ESMは機能しているといえます。
 7月5日、緊縮政策の是非を問う国民投票が実施されました。投票結果は緊
縮反対が61.31%の多数になり、ギリシャのユーロ残留が可能かどうかはユー
ロ圏首脳の決断にゆだねられることになりました。7月8日以降、チプラス政
権とユーロ首脳の間で「第3次支援」に向けた厳しい交渉が続けられ、最終
的に、付加価値税の増税・徴税強化、離島向け優遇税制廃止、海運会社への
増税、年金支給開始年齢引下げ・給付抑制、国有資産の民営化・資産売却等
の再建策とその国内法制化を確約させられました。今後、ギリシャの改革の
進展状況を見ながら、総額860億ユーロ規模に及ぶともいわれる「第3次支援」
実施の具体的な交渉が行われます。ECBも70億ユーロの資金支援を再開しま
した。従来、チプラス首相が一貫して反対してきた政策の殆どを呑まされ、
以前より厳しい条件になりました。首相が率いる第1党のSYRIZA126人中36人
が造反する事態となり、未熟なポピュリズム的手法が不安定要因を生むこと
になったとされます。
 ギリシャ問題の本質は、2010年、当時の財務相が「納税義務遵守について
深刻な問題がある。約120万の個人や企業が税金を滞納。ギリシャには税制
がある振りをしているが実はない」と失言したのが発端で、ウォール・スト
リート・ジャーナルは「2014年末時点で、累積している税金未納額は約760
億ユーロ。未納額の大半は回収不能」、「ギリシャの地下経済は、GDPの1/4
以上と膨大で、何十億ユーロもの税金が徴収不能に陥っている」と報じてい
ます。OECDは、「ギリシャの税金未納額は年間税収の約90%に達していて、
先進国では最大」、IMFも、「政府が脱税を取り締まるだけで、債務危機は
解決できる」としています。これでは国の財政規律の確立なしには、ギリシ
ャ問題の抜本解決は難しいといえます。

 中国市場では、「上海総合指数」の振幅が大変大きくなりました。同指数
は、昨年3月12日安値1,974から今年の6月12日高値5,178まで2.6倍になり、
「創業版指数」は、昨年5月15日の安値1,210から今年6月5日の高値4,037で、
ほぼ3.3倍になっています。人民銀行の連続的緩和策を背景にした値上がり
です。経済統計は鈍化を継続していて、ファンダメンタル面の裏付けには乏
しい訳ですが緩和資金(マネー)による金融相場、個人中心の短期売買の市
場になっています。景気実体の裏付けのない株価上昇は続かないのが普通で、
上海指数は、6月12日以降ほぼ一本調子で急落して、7月3日には3,629とほぼ
半月で約30%の値下がりになり、創業版指数も4,037から7月3日の2,458まで
約40%急落しました。
 政府、人民銀行は、追加緩和(貸出基準金利引き下げ。預金基準金利、預
金準備率の引き下げ)、証券管理委員会による緊急声明。政府系ファンド
(SWF)・保険会社による株式購入。年金運用規定の緩和(現在は「国債と
銀行預金のみ」を変更し、株式組入れを30%まで拡大)。信用取引の証拠金
率の引き下げ。共同証券会社設立による株式購入(中国版PKO)、株式公開
(IPO)の一時停止等、対策を続け様に打ち出しました。更に、公安当局に
“空売り”で儲けた人の調査を命じる。取引停止を強行するなど、自由な資
本市場ではおよそ考えられない規制や圧力をかけています。7月8日には上海
証取で353銘柄、深せん証取で970銘柄、全体の55%の取引が停止、現在もま
だ約20%以上が停止されています。ここへ来て、「上海指数」も4,000程度
まで戻り、落ち着きを取り戻したとの報道も多い。市場関係者は「このとこ
ろの売買停止は、世界の投資家の信頼感に影響を及ぼす。取引再開時には引
き続き売られるだろう」、「当局の政策はパニックの度合いを強めた」等の
見方に変わっています。
 IMFは、特別引出権(SDR)の通貨バスケットに人民元を組み入れる方向に
あるが人民元取引の透明性の拡大と規制緩和を求めている。“逆風”となる
ことは間違いない。中国経済の大きな調整はまだ先の事と思われるが、中国
経済の悪化は、中国への輸出依存度が高いアジアの新興国や豪州、ブラジル。
そのアジア依存度が高い日本へも影響は及ぶのではないかと警戒されていま
す。
 一方、ブルームバーグによると、米・投資銀行、モルガン・スタンレーの
チーフ・ストラテジストはリポートで、「中国やギリシャ騒動で気付かない
かもしれないが、世界経済の勢いは増している。今年7〜12月の世界成長率
は4%近くになる。1〜6月期の2.9%を大きく上回る」、「中国経済の減速が
長引き、ギリシャがユーロを離脱するリスクは75%とみていたが、それでも
世界経済に楽観的になるのに十分な理由がある。それは中央銀行による刺激
策で、年内は世界の18の中央銀行が実施している」、「先進国の内需の強さ
が成長のエンジンだ」と述べ「世界経済は段階的な回復を続ける」としてい
ます。クレディ・スイス・グループのエコノミストチームも中国株の急落や
ギリシャのユーロ離脱のリスクを「かすかなパニック」として楽観的です。

 米経済。7月15日、FRBは「地区連銀報告」を公表しました。総括判断で、
米経済活動は「すべての地区で拡大した」として、「悪天候等、一時的な要
因が薄れるにつれて回復のテンポが速まっている」と指摘、「見通しも良好」
と説明しています。米経済の7割を占める個人消費は、地区ごとに改善の度
合いにばらつきはあるとするものの、自動車販売が全地区で好調で、全体の
先行き見通しを明るくしています。(因みに、1〜6月期の新車販売は852万
台で4%の伸び。年間で1,700万台超と、14年振りの大台も予想されている。
売価の高い大型車の販売が好調で、平均売価も2.5%強高くなっている)。
住宅価格も大半の地区で上昇したとしています。
 イエレン議長は、7月14日(上院)・15日(下院)両日、半年1度の米・議
会証言に臨み、内需の回復と雇用の好循環で米経済が上向きつつある現状を
踏まえ、賃金上昇等を確認できれば、改めて、「年内の利上げが適切」と述
べています。また、講演でも前回(2004年からの)、グリーンスパン元議長
時代の「機械的な利上げは絶対にやらない」と述べて、緩慢な利上げが後の、
住宅・クレジットバブルを招いたとの反省を述べていて、夏場の雇用統計次
第では9月利上げもあり得るとの見方が出ています。フィツシャー副議長も
「GDP成長率が2.5%程度の巡航速度に回復した。利上げが始まればFFレート
の3.25〜4.00%がターゲット」と述べるなど、今後、市場は利上げを織り込
む展開になりそうです。
 因みに、ブルームバーグの最近の調査では、9月が50%、9月以降の年内が
37%と、9月が優勢になってきました。
 日本は相変わらず“官製相場”で“総強気”です。米国の、慎重にやると
は言いつつも、未曾有の規模の緩和から利上げ=引締めに向かう大きな政策
転換の影響を甘く見てはいけないでしょう。ご用心です。
                        (平成27年7月25日記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
  第3の企業年金創設、企業で運用し給付は変動
   ――オランダのCDC制度を参考に導入

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・AFP            植村昌機
 ◇◆◇
 厚生労働省は2016年度にも企業が運用し、運用次第で加入者への給付額が
変動する確定給付型と確定拠出型の特徴を併せ持つハイブリッド型企業年金
を創設する。企業は掛金を現在より多く拠出し、運用方法は労使が組織的に
決める。運用が不調でも追加拠出する必要がなく、積立金が減れば給付を減
額する。加入者は変動するリスクは負うが自分で運用する必要はない。以下
の表は新制度と従来制度を比較したものである。

     |新制度    |確定給付   |確定拠出
掛 金  |企 業    |企 業    |企業
運用者  |企 業(労使)|企 業    |個人
運用リスク|労 使    |企 業    |個人
年金給付額|運用次第で変動|一定額を保証 |運用次第で変動
資産管理 |企業の一括管理|企業の一括管理|社員ごとに区別

 厚生労働省はオランダの「集団運営型確定拠出年金制度(Collective Def
ined Contribution Plan CDC制度)を参考にしている。そこで、この制度の
概要を検証する。
 オランダのCDC制度は、個人運用型の確定拠出年金制度とは異なり、個人
勘定は存在しない。その代わり、給付算定方式が存在する(例えば、年金額
=全期間平均給与×率(2%)×勤務年数×物価調整率)。法令上は確定給付
制度に分類され、積立規制が課される。それは確定給付制度と同様のもので
あり、法令上も確定給付制度に分類され、同一の積立規制が課されている。
積立規制は、発生済受給権に対する年金資産額が1年後に105%以上あること
と(ソルペンシーチェック)、将来にわたって発生済受給権に対して105%
以上の積立比率が維持(継続チェック)されることの二つを満たす必要があ
る。
 CDC制度にも上記の積立規制が適用されるため、積立水準に応じて、発生
済みの受給権の給付水準を調整し(積立比率による物価スライド率の調整ま
たは給付減額)、掛金水準を一定に保つ。掛金水準を維持する期間は労働協
約の有効期間であり、定期的に見直される。一定期間にわたって掛金水準が
固定されることから、オランダではCDC制度は、企業会計上は確定拠出扱い
とされている。
 制度全体の年金資産が一括運用されるため、個人運用型の確定拠出年金と
は異なる。高年齢層の従業員や受給者の資産も結果としてリスク資産に投資
されることになり、運用の影響を従業員・受給者も同様にうけるため、世代
間でのリスクシェアが行われる。
 また、給付水準を安定させるため、CDC制度への移行時や労働協約の見直
しの際にはその時点における積立水準を検証し、次回の協約改定時までに給
付水準の低下が懸念される場合は、事業主が掛金を一括拠出し積立水準を向
上させる(逆の場合は取り崩す)。このことから事業主と従業員・加入者の
間でリスクシェアが行われている。
 オランダのCDC制度は、積立余剰(ソルベンシー・マージンの積立)の状
態を前提とした、一定期間内の掛金水準維持(=給付水準の調整、従業員・
加入者のリスク)と定期的な積立水準の検証に伴う掛金の臨時支出(=事業
主のリスク)というリスク分担を行う制度であり、実際には給付水準の減額
は想定していない。よほどのことがなければ積立不足が起こらないように、
掛金水準が決定されており、万一、積立不足が発生した場合には、追加掛金
を拠出し積立水準を回復させることを想定していると思われるからである。
 この制度の事業主のメリットは、一定期間掛金水準が固定されるため、そ
の間の企業のキャッシュフローのコントロールが容易であることと、企業会
計上は確定拠出と扱われるため財務上の負担が軽いことである。デメリット
としては、法令上は確定給付として取り扱われるため、余裕のある積立水準
を維持しなければならない。
 従業員側のメリットとしては、本来の確定拠出制度とは異なり、確定給付
制度とほぼ同様の給付の安定性が確保され、かつ老後の所得保障で重要なイ
ンフレスライドも期待できる。デメリットとしては、運用環境が悪化して積
立水準が低下した場合は、インフレスライドが行われず、場合によっては年
金額が減額される可能性があるということである。
 我が国の場合は、収支相等原則に基づき、100%の積立水準を目標に掛金
拠出している。あらかじめソルベンシー・マージン(積立金の余剰)を確保
するための拠出は法令上行えない。また、企業会計上、確定拠出制度として
扱われるかどうかは不透明である。

 〈CDC制度の基本的な仕組み〉

・給付算定式は確定給付制度と同様
 (例)年金額=全期間平均給与×率(2%)×勤務年数×物価調整率
・個人勘定は持たない
・確定給付制度の積立規制が課される。抵触した場合は掛金を維持し、給付
 を調整
 (例)積立比率が105%を下回った場合、1年以内に回復しなければ給付を削
 減する

 〈物価スライドの例〉

積立比率105%以下 ⇒物価調整率=1(物価スライドなし)
積立比率105〜140% ⇒物価調整率=1+α(部分物価スライド:α<物価上昇率)
積立比率140%以上 ⇒物価調整率=1+β(完全物価スライド:β>物価上昇率)
 ◆◇◆

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┃ ■年金相談の現場から(45)
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 被用者年金制度の一元化について(パート1)
   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正
する法律(被用者年金制度の一元化法)」が、平成27年10月に施行されます。
 この改正は、多様な生き方や働き方に公平な社会保障制度を目指す「社会
保障・税一体改革大綱」に基づき、公的年金制度の一元化を展望しつつ、今
後の制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を
拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来
に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付
を受けるという公平性を確保することにより、公的年金全体に対する国民の
信頼を高めるため、厚生年金保険制度に公務員及び私学教職員も加入するこ
ととし、厚生年金保険制度に統一するというものです。
 以上が制度改正の趣旨ですが、もう少し具体的に被用者年金制度の一元化
に伴う制度や手続きの変更内容を今回と次回で説明させていただきます。

 1. 被用者年金制度の一元化法の概要
 (1)厚生年金保険に公務員及び私学教職員も加入することとし、2階部分の
 年金は厚生年金保険に統一されます。
 これにより、一元化後の種別の名称変更が行なわれます。
 ・第1号厚生年金被保険者⇒厚生年金保険の被保険者
 ・第2号厚生年金被保険者⇒国家公務員共済組合の組合員
 ・第3号厚生年金被保険者⇒地方公務員共済組合の組合員
 ・第4号厚生年金被保険者⇒私立学校教職員共済制度の加入者
 *なお、上記の厚生年金保険被保険者種別(第1号〜第4号)の
 名称については、今後省令等で規定される予定です。

 (2)共済年金と厚生年金保険の制度的な差異については、基本的に厚生年
 金保険に揃えて解消されます。
 *なお、厚生年金保険の制度を共済年金の制度に揃える事項も一部ありま
 す。(次回説明予定)

 (3)共済年金の1・2階部分の保険料を引き上げ、厚生年金保険の保険料率
 (上限18.3%)に統一されます。
  共済年金の保険料については、厚生年金保険と同様、現在も毎年0.354%
 づつ引き上げられていますが、この引上げスケジュールを法律に位置づけ、
 公務員は平成30年9月に、私学教職員は平成39年4月に、18.3%に統一され
 ます。

 (4)共済年金にある公的年金としての3階部分(職域加算部分)は廃止され、
 新たに「退職等年金給付」が創設されます。
  *「退職等年金給付」は、完全積立方式で運営され、掛金は事業主と同
 額を拠出(法律上、標準報酬月額の0.75%が上限)、将来(原則65歳)終
 身退職年金と有期退職年金(受給期間は原則20年)に区分して支給されま
 す。なお、給付事由発生後6ヵ月以内に請求すれば、有期退職年金に限り、
 年金に代えて一時金での受給も可能とされています。

 2. 年金の裁定や給付等について
 (1)年金の裁定・給付業務や記録の管理、適用徴収業務等は、従来どおり所
 管の実施機関(一元化前の共済年金の組織)で行われます。年金給付の受
 給資格要件については、厚生年金保険期間と共済加入期間を通算して審査
 され、受給資格要件を満たす場合は、それぞれの加入期間に応じて、従来
 どおり所管の実施機関で行われます。すなわち、一元化後も年金の裁定や
 給付業務等の役割分担及び業務内容については、変更はありません。

 (2)なお、障害厚生年金・障害手当金又は遺族厚生年金(短期要件)につ
 いては、それぞれ死亡日又は初診日に加入していた実施機関が他の実施機
 関の加入期間分も含めて年金額を計算し、決定・支給されます。

 3. 一元化によるサービスの向上
 (1)年金相談や届書の受付については、一部の届書を除いて、すべての年
 金事務所等の窓口で対応することになります。(ワンストップサービス)
 このため、届書については、年金事務所等での受付後、所管の実施機関
 (一元化後の共済年金)に回送されます。

 (2)ワンストップサービスの対象とされない届書
 障害年金請求書、現況届(ハガキ形式)、年金請求書(ハガキ形式)等
 については、ワンストップサービスの対象とされず、従来どおり、所管の
 実施機関で直接対応されることになります。
 ◆◇◆

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┃ ■NPOアクティビティー
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出版のお知らせ―――――――――――――――――――――――――――
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 《最新版・2015年版》 平成27年1月30日発売!! 好評 4月7日増刷出来!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2015年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
  共編
 A4判・138頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
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 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から10年以上が経過し、この
間、退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金
の代行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進
行してきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も個人資産の目標金額未達成、投資教育の内容・頻度、運用商品開発の
不足等、課題が発生しています。さらに、厚生年金基金改革法が2014年4月
に施行され、解散や移行先制度の検討等、企業年金の再編は第二のステップ
に入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で11冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆、IFRSの概要、厚生年金基金改革と労働組合の
対応、年金ガバナンス体制の見直し・強化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

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 《最新版発売中!!》平成26年5月30日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)
 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 平成24年5月31日発行
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
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 本ハンドブックは、施行13年目を迎えた確定拠出年金制度が法律制定の趣
旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の一
翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加入
者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私たち
の活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理を
行いました。
 第I部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第II
部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提言、
第III部は制度の課題と展望について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、マッチング拠出等
が認められた法改正に対応し第3版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
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要望等ございましたら、下記までご連絡をお願い申し上げます。
 内容詳細は下記のURLをご覧ください。
 →http://kinyunenkin.jp/09syuppan.htm
 お問い合わせ、お申し込みは
 NPO金融年金ネットワーク事務局(
 または電話(03-5444-0539)、FAX(03-5444-0303)まで。

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●次号(第137号)は9月1日に送信の予定です。
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