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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                     第137号 2015年9月1日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
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■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(120)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(11)
  日本版スチュワードシップ・コードについて(1)
 ★マーケットトピックス
  中国発市場混乱、米利上げは先送りも? 日本・官製相場の行方は?
 ★年金トピックス
  米国401(K)プランを巡り集団訴訟が続発
   ――確定拠出年金における忠実義務のあり方を考える
●年金相談の現場から(46)
  被用者年金制度の一元化について(パート2)
●NPOアクティビティー
出版のお知らせ
◇最新版・2015年版 平成27年1月30日発売!
 好評4月7日増刷出来!
「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2015年版
◇最新版好評発売中!! 平成26年5月30日発売! 残部僅少!
「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(120)
                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 前月、確定給付年金制度の受給者にまつわる財政の仕組みを、簡単な「制
度」を事例にご説明した。事前積立の確定給付制度における年金額は、加入
期間中の積立額(その原資は掛金と運用収益)と受給開始後の運用収益を織
り込んだ金額である。またその年金額を、条件を満たす期間だけ受け取れる
権利のことを「年金受給権」という。受給者一人一人からみると約束されて
いるそれは、年金額を縦軸に、支給期間を横軸とした長方形の面積である。
 ほんの数年前までは、厚生年金基金の運営において重要なのは、上記の年
金受給権を守ること、それゆえに安易な解散を認めない、というのが行政の
スタンスであった。
 それがここ数年で、年金受給権よりも代行資産の保全が第一となり、それ
が代行制度そのものをやめてしまいなさいというスタンスに変化した。その
結果が、大多数の受給者の「長方形」の残り部分の「消失」につながりかね
ないという現状になっているわけである。
 予定利率が5.5%と一口に言うが、考えてみると銀行の定期預金金利が年
利5%超の時代と、限りなく年利0%に近い時代では、5.5%の重さは全く違
う。今更ぼやいてもしょうがないことだが、金利の自由化が実現する過程で、
予定利率をもう少し弾力的に変更するということが必要だったのだ、と思う。
 受給権の「長方形」の面積を守ることが理想であるが、どうしてもそれが
難しければ、例えば縦軸(年金額)を短くする、すなわち予定利率を引き下
げる、ということをしてでも支給期間を守るという選択肢はあっても良かっ
たのではないかと考える。財政的に厳しいときに予定利率を下げることは、
「受給者の今後の年金額の減額」、「加入員がもらう将来の年金額の減額」
「事業主の特別掛金負担の抑制」などの影響をもたらす。事業主はそれでも
追加負担するし、受給者と加入員は年金額が減少するが、このような事業主、
受給者、加入員の「三方一両損」的な落としどころを探る手はあったはずだ。
後継制度が発足する場合、このあたりの苦い経験を当然ながら、反映させた
しくみとなるはずである。
 それでも、厚生年金基金を解散したら、後継制度には加入しない、と判断
する事業主もいることだろう。その場合は、基金が解散して清算された一時
金を、加入員本人が直接受け取ることになる。もちろんこれは、老後のため
の原資として、当面の浪費はしないように心掛けなければならない。
 ではそれ以降をどうするのか。対応策はいくつかあるのだが、その一つに、
企業年金連合会に移管するという選択がある。5.5%とはいかないまでも、
世間並みの予定利率は設定されているし、当該年齢時に一時金選択も可能で
ある。なにより、年金で受け取るなら保証期間付きの終身年金である。移管
後の追加拠出はできないが、将来転職等でDB制度に加入した際、連合会に移
管したお金を再度移管することもできる。詳細を同会のホームページで確認
していただけたらと思う。
 ただ残念なのはこの制度、資金移管時の年齢が高齢化するほど予定利率が
低下するため、比較的若い加入員にとっては一つの選択肢であると思うが、
特に基金受給者であった者が加入するというのは、そのコストや税制上の影
響を踏まえると微妙な選択のようだ。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOトピックス
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★今からでも聞いてみよう投資の話(11)――――――――――――――――
 日本版スチュワードシップ・コードについて(1)

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 今回はあまり聞き慣れないスチュワードシップ・コードについて見ていき
ます。スチュワードシップ・コード(以下、SCとします)とは、昨年2月、
金融庁から発表され、アベノミクスの第3の矢の成長戦略の一環として位置
づけられたものです。機関投資家が上場企業との建設的な対話を通じて、そ
の企業の企業価値向上を促し、機関投資家にとって投資リターンの拡大(金
融資産の増加)を目指すことを目的としたものです。いわゆる「稼ぐ力を取
り戻す」と表現される施策の一つであり、「モノ言う株主」とは異なる。こ
のSCはコーポレートガバナンス改善のために英国が初めて策定し、日本はそ
れを参考にした。ちなみにスチュワードとは「財産管理人」であり、スチュ
ワードシップとは「その財産管理人の立場や責任」を言う。ただ、このSCは
課題もあって、実際に運用されているのは英国だけである。
 企業年金との関わりという観点からは、年金資産を管理するGPIFなどの公
的年金や企業年金基金がその資産の一部を外部のプロの運用機関に委託運用
することがありますが、その先が機関投資家であり、SCへの取り組み次第で
は、年金資産の運用成績向上に資するのではないかと考えられている。ただ、
本来の意義は、機関投資家が「受託者責任」を果たしているかどうかの意識
づけではないかと個人的には考えます。
 日本版SCの特徴は、英国にほぼ準じたもので、以下の7つの原則を掲げて
いる(原文そのものではなく、筆者の理解で簡潔に表現している)。1〜6が
英国に準じたものであり、7は日本独自の規範である。

 1. 機関投資家はSC責任を果たすための方針を公表すべきである。
 2. 機関投資家は企業との利益相反についての方針を公表すべきである。
 3. 機関投資家は企業の状況を的確に把握すべきである。
 4. 機関投資家は企業と認識の共有を図り、問題の改善に努めるべきであ
  る。
 5. 機関投資家は議決権の行使、その結果公表、等は企業の持続的成長に
  資するものとなるよう工夫すべきである。
 6. 機関投資家はSC責任の活動を顧客・受益者に対し報告すべきである。
 7. 機関投資家は対話やSC活動のために適切な判断を行う実力を備えるべ
  きである。

 ここで改めて機関投資家とは、銀行・信託銀行、生・損保会社、投信・投
資顧問会社、年金基金、等であって、金融庁が発表している最新の情報(6
月11日現在)では、191社がSCの受け入れを公表している。この数値は国内
の主だった機関投資家は含まれており、今後企業との対話(エンゲージメン
ト)や株主総会の議決権行使結果の公表など、企業への具体的な働きがけが
より強まることになる。このことは前述したように、機関投資家がいわゆる
「モノ言う株主」になると言うものではないとされていますが、これまでよ
りは機関投資家から企業へのアクセスが増えることは間違いないでしょう。
ただ、機関投資家の中には、上場企業すべての株式を保有するわけでもない
ので、エンゲージメントが特定の企業に偏ることもあるでしょう。
 この先コーポレートガバナンス・コードという言葉が出てきますが、これ
も成長戦略の一環として金融庁、東京証券取引所が主体となって策定した規
範です。政府はSCと併せ車の両輪として機能させる狙いであり、上場企業は
株式市場に対して改めて両コードに向かい合わなければならなくなった。こ
うした規範の策定は、企業への政府関与の深入りであり好ましいことではな
いとの意見もあり、それも賛同しますが、上場企業として株式を公開してい
る以上、株主への配慮に欠けた企業には認識を新たにする機会を設けたもの
という位置づけであれば許容もできるでしょう。課題としては、機関投資家
からは投資先企業のきめ細かな情報収集が難しい、株主総会は集中開催の傾
向があり出席が難しい、など企業との関与のあり方に課題があると指摘され
ている。一方で、企業からは多様な機関投資家とのエンゲージメントには苦
慮することもあるとの感想も述べられており、双方の言い分が納得に至るか
どうかは別問題である。
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 中国発市場混乱、米利上げは先送りも? 日本・官製相場の行方は?

                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 米経済は、ドル高、原油安、中国株式市場の混乱や新興国の経済変調にも
拘らず、個人消費と輸出に若干の“もたつき”は見られるものの、依然好調
な自動車販売(年間1700万台のペース)や住宅市場の活況等により、雇用の
改善にはかなりの前進が見られ、FRBのイエレン議長も7月の議会証言で「米
経済は利上げをこなせるだけでなく、利上げを必要とする状況にある。利上
げを待ち過ぎた場合には、より速いペースでの利上げを余儀なくされるだろ
う」とまで述べて「年内の利上」を明言していました。8月19日に公表され
た7月28日・29日のFOMC議事要旨では、多くの委員が「労働市場のもう一段
の改善を見たい」と発言したと記され、“一段の改善があれば利上げをする
”とも、“改善しなければ見送る”とも読める玉虫色の表現ですが、市場関
係者の間では9月の利上げを予想する向きが増加していました。米国株の年
初来のパフォーマンスは、ブルームバークのデータで、8月上旬時点でダウ
平均がマイナス2.2%、S&P500でプラス1.2%と頭打ちに状態になっていまし
た。7〜9月期のS&P500の企業業績も8月初めのトムソン・ロイターの集計で
マイナス2.6%と利上げ、ドル高を織り込む状況になっていました。
 しかし、中国の株式市場の急落に端を発した世界同時株安、中国経済の減
速懸念と新興国からの輸出停滞、原油をはじめとする商品価格の急落は「低
インフレ」、「低成長」への懸念を強め、中期的に米経済の成長をむしばみ
かねないドル高の影響を軽視すべきでないとの見方から、俄かに不透明感も
漂い始めました。8月25日、ブルームバーグの調査では、9月16日・17日の
FOMCでの利上げ決定の確率は1週間前の48%から24%と大きく低下していま
す。米国と同様に景気が改善し、利上げに向かっていた英国もBOEのカーニー
総裁が「年末までに決める」と事実上の年内の利上げ見送りをコメントしま
した。

 今回の市場混乱の根源にあるのは、世界第2位のGDP大国、中国の実体経済
が、4〜6月期のGDP成長率が政府発表の7%ではなく、もっと減速しているの
では、との懸念です。7月の鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資はいず
れも事前の予想を下回り、貿易統計も前年比で輸出がマイナス8.9%、輸入
もマイナス8.6%と縮小しました。これ等の数値は7月単月の話ではなく、長
期に、右下りトレンドが継続していることが問題とされています。8月の製
造業PMI指数(購買担当者景況感指数)も47.1と、リーマンショック後の2009
年3月の44.8以来の冴えない数値になっています。
 元々、中国のGDP統計は、日米欧など先進諸国の統計並みの信頼性に乏し
いとされ、李克強首相は、電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行新規融資額等
を見ているとされています(因みに、温家宝前首相は、電力消費量と鉄道貨
物輸送量。当時のグリーンスパン元議長は、鉄スクラップ価格等を注視とい
われていた)。その電力消費量は7月の前年比がマイナス1.3%、鉄道貨物輸
送量もマイナス10.9%(1〜7月累計でもマイナス10.2%)で、どう見ても7
%成長と符合しないといわれています。一方、銀行の新規融資は1〜7月累計
で前年同期比31.2%増加していて、相当な部分が“熱銭”になって証券市場
へ流入して、半年で5,178(6月12日)まで上海市場を押し上げたものと見ら
れています。
 更に、8月11日、人民銀は予想外の3日連続の人民元切り下げを行い、合計
で4.5%の対ドルでの切り下げに踏み切りました。人民銀行は、「ドルとペ
ッグしている(ドル高に引きずられて高くなっている)人民元を、市場実勢
に近付けるための調整で、今後は前日の実勢値に上下0.3%の範囲で基準値
を決める方式に変更する」と発表して、「輸出の拡大を狙った切り下げでは
ない」と強調していますが、これも、中国経済はそこまで悪いのかという疑
念を招き、市場の大きなリスク要因として顕在化したと言えます。
 さて、日本ですが、回復基調にあった景気の足取りが重くなっています。
賃上げと、統計上、消費増税の悪影響が消えることとなどから個人消費の拡
大が想定されていました。ところがボーナス月の6月の全世帯消費支出は前
年比マイナス2%、実質賃金もマイナス2.9%に低下しました。天候要因や賞
与の支給が7月に後ずれしたこと、軽自動車税の引き上げ等が要因では、と
も指摘されています。しかし、内閣府が、8月17日に発表した4〜6月期のGDP
統計(速報値)によると前期比マイナス0.4%(年率換算:マイナス1.6%)
と3四半期ぶりのマイナス成長に沈みました。個人消費がマイナス0.8%と全
体の足を引っ張りました。実質ベースの所得の伸び悩みが大きく効いている
のではないかと思われます。期待された輸出と設備投資もマイナスで、在庫
投資と公的需要の増加がプラスサイドに効くという景気の好循環が途切れた
印象です。8月26日発表の月例経済報告でも、「改善テンポにばらつきがみ
られる」、「総じてみれば底固い動き」、「このところ弱含み」といった下
方修正の表現が見られます。こうなると追加の財政・金融政策への期待が出
てくるところです。本田内閣官房参与は、8月4日、ロイターの取材に対し、
「低迷している個人消費が復調しなければ、今年度国費ベースで3兆円程度
の補正予算で下支えが必要」と述べたと報じられ、8月25日には浜田参与も
ブルームバーグに対し、「日本と米国の経済は心配することはないが、アベ
ノミクスの恩恵を受けていない低所得者を支援する財政措置が必要」として
「食料品への消費税の全廃も一手」と述べています。日銀に対しても追加緩
和を期待する声が高まりつつあるようです。

 中国市場の混乱の影響で、東京市場も大きく値下がりした。日経平均は6
月24日の20,952円(TOPIXは8月11日の1702)が直近のピークになり、暫らく
は調整期間へ移行するものとみられます。2014年10月末の「追加緩和」以降
の日銀による日本株ETFの購入額は2兆6500億円。買いコストは19,035円とも
言われていて、評価損が出ていることになります。「官製相場」の限界が露
呈したとの意見も聞かれます。しかし、ECB、日銀、人民銀の世界の中銀が
揃って大規模な金融緩和を続けて(通貨安要因)います。金融政策の方向が
逆のFRBは、一段のドル高から米国景気が停滞に陥ることを避けるため、利
上げは慎重に進めると宣言しています。ドル高が暗黙の前提の円安の流れに
は注意が必要です。
                        (平成27年8月26日記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
 米国401(K)プランを巡り集団訴訟が続発
  ――確定拠出年金における忠実義務のあり方を考える

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・AFP            植村昌機
 ◇◆◇
 米国の401(K)プランは、2014年末でその資産が4.5兆ドル(約540兆円)を
超え、退職生活保障の主柱になっている。この401(K)プランを巡って加入者
がプラン提供企業を訴える集団訴訟が話題となっている。近年、大企業を相
手取った案件のいくつかが和解に至り、その高額な和解金の支払いがニュー
スになっている。
 特に10年近く前から、米国を代表する大企業を対象に、投資商品の選択肢
の構成、その手数料水準などを巡って大型の集団訴訟が10件以上提起され、
その一部が企業側の加入者側への高額な和解金の支払いで終結している。

 〈最近の和解事例〉
 ●インターナショナルペーパー社(訴訟終結2014年1月)
 マネジメント及びレコードキーピング費用が高すぎる。自社株投資を含む
 一部の投資商品選択肢が不適切として提訴。企業は3000万ドル(約36億円)
 を加入者に支払う。
 ●ロッキード社(訴訟終結2015年2月)
 手数料が高すぎる。極めて業績の悪いファンドを選択肢として提供。企業
 は6200万ドル(約74億円) を加入者に支払う。
 ●アメリプライス社(訴訟終結2015年3月)
 マネジメント及びレコードキーピング費用が高すぎる。同社系列企業の提
 供する一部の投資商品選択肢が不適切。企業は2750万ドル(約34億円)を
 加入者に支払う。

 これらの集団訴訟は、401(K)プランの投資商品選択肢やその手数料等に関
し、より適切な選択肢の構成やより安い手数料を設定することが可能だった
にも関わらず、企業側がそのような判断を行わなかったのは、加入者に対す
る忠実義務の履行を怠ったものであると、加入者が企業を訴えている。そし
て、最終的な和解内容は、共通して高額な和解金を支払い、運用内容の見直
しなどを受け入れている。
 他の企業にとっては、一連の訴訟で問題となったものと同様のプラン運営
を行っていれば、今後訴訟を提起される恐れがあること、それを回避するた
めには、各社が和解条件として受け入れた改善策を参考に、自身のプラン運
営を見直すことが重要という状況になっている。
 さらに、今後の企業の動きに影響を及ぼすと思われるものがエジソン・イ
ンターナショナル社の401(K)プランを巡る連邦最高裁判決である。この訴訟
は、一部の投資商品の手数料が高いとして提訴されたが、問題視されたのは
エリサ法で規定する提訴期間6年間の起算点をどの時点とするかであった。
一審は、起算点は商品選定時として提訴期間を過ぎているので訴えを却下し
た。しかし、最高裁判決は原審に差し戻し(2015年5月)、判決は「忠実義
務は投資選択肢を監視し、不適切なものがあればそれを除去する「継続的な
責務」を有しており、この責務は、投資選択肢の選定時に適切な慎重さを持
って選定する責務とは別個独立して存在する」としたうえで、提訴期間の起
算点を投資選択肢選定時とした原審の判断を誤りとした。
 今後、401(K)プランを提供する企業は、プラン開始時や投資選択肢追加時
のみならず、その後も継続的に監視し、必要に応じて入れ替えを行うなどが
明確な責務として求められていくこととなる。我が国とは制度等が異なる面
があるが、より加入者保護を強めつつある米国の動きは、確定拠出年金等に
おける忠実義務のあり方を考える上で参考になると思われる。      
         (『月刊企業年金』2015年8-9月号・海外年金事情より)
 ◆◇◆

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┃ ■年金相談の現場から(46)
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 被用者年金制度の一元化について(パート2)
   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 前回は、「被用者年金制度の一元化」の制度改正の趣旨や概要、年金の決
定や支払い、ワンストップサービス等について説明しましたが、今回は制度
的な差異や変更点について説明させていただきます

1. 共済年金の制度を厚生年金保険制度に揃える事項
〔1〕公務員等の被保険者資格について、70歳の年齢制限が設けられます。
 ⇒現行の共済年金は年齢制限はありません。
 *なお、私学共済は厚生年金保険と同様70歳までです。
〔2〕60歳代前半の公務員等退職者に係る在職中の老齢厚生年金等の支給停
止調整額について、47万円から28万円に引き下げるなど、基本的には厚生年
金保険制度に合わします。
〔3〕公務員等に係る障害給付について、保険料納付要件が課されます。
〔4〕公務員等に係る遺族給付の転給制度が廃止されます。
〔5〕未支給年金の給付範囲を、死亡した人と生計を同じくしていた配偶者、
子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、または3親等内の親族に統一されます。
 ⇒現行共済年金の制度は、死亡した人と生計を同じくしていた配偶者、子、
父母、孫、祖父母、または、該当する遺族がいないときは、死亡した者の相
続人に、未支給年金が支給されます。

2. 厚生年金保険の制度を共済年金の制度に揃える事項
〔1〕2月期の年金支払額の端数処理について、各期支払期における支払額に
1円未満の端数が生じたときはこれを切り捨て、切り捨てた端数の合計額を2
月期の支払額に加算して支払われます。なお、切り捨てた端数の合計額に1
円未満の端数が生じたときは切り捨てられます。
 ⇒現行の厚生年金は、各期支払期において切り捨てた端数の加算は
行われません。

3. 年金給付からみた変更点
〔1〕老齢給付
(1)受給資格期間については、それぞれの加入期間を合算して受給資格期間
が判定されます。なお、長期加入者の特例、定額部分の上限(480月)、中
高齢者の特例などは、合算されません。
(2)年金額については、それぞれの加入期間ごとに計算されます。
(3)加給年金額については、それぞれの加入期間を合算し、加算要件である
資格期間(原則20年)が判定されます。また、加算にあたっては、政令で定
める優先順位の高い年金に加算されます。
(政令で定める優先順位)
・加給年金額の加算開始が最も早い年金に加算
・同時の場合は、加入期間が長い年金に加算
・同じ場合は、厚年1号、厚年2号、厚年3号、厚年4号の順で加算
(4)年金の裁定・給付等は、従来どおり所管の実施機関で行われます。

〔2〕障害給付
(1)障害年金の年金額の計算にあたっては、それぞれの加入期間ごとに平均
標準報酬月額を計算し、加入期間ごとに計算した額を合算して得た額が年金
額とされます。なお、合算した加入期間が300月に満たない場合は、300月と
みなして計算されます。
(2)障害手当金の額の計算については、上記の障害厚生年金と同様です。
(3)障害厚生年金及び障害手当金については、初診日に加入していた実施
機関において、他の実施機関の加入期間分も含めて年金額を決定・支給され
ます。

〔3〕遺族給付
(1)遺族年金の年金額の計算に当たっては、それぞれの加入期間ごとに平均
標準報酬月額を計算し、加入期間ごとに計算した額を合算して得た額が年金
額とされます。なお、合算した加入期間が300月に満たない場合は、300月と
みなして計算されます。
(2)短期要件の遺族厚生年金の実施機関については、死亡日に加入していた
実施機関において、他の実施機関の加入期間も含めて年金額を決定・支給さ
れます。
(3)中高齢寡婦加算については、それぞれの加入期間を合算して支給要件が
判定され、20年以上ある場合には、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額が加算
されます。また、加算にあたっては、政令で定める優先順位に基づいて、優
先順位の高い年金に加算されます。(政令で定める優先順位)
・加入期間が最も長い遺族厚生年金に加算。
・同じ場合は、厚年1号、厚年2号、厚年3号、厚年4号の順で加算。

4. その他
〔1〕年金額の端数処理について、現行の100円単位(50円未満切捨て50円
以上切上げ)から円単位(50銭未満切捨て50銭以上切上げ)に変更されます。
〔2〕「年金加入期間確認通知書」は、添付書類としての取扱いが原則廃止
されます。
 ◆◇◆

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 《最新版・2015年版》 平成27年1月30日発売!! 好評 4月7日増刷出来!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2015年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
  共編
 A4判・138頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から10年以上が経過し、この
間、退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金
の代行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進
行してきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も個人資産の目標金額未達成、投資教育の内容・頻度、運用商品開発の
不足等、課題が発生しています。さらに、厚生年金基金改革法が2014年4月
に施行され、解散や移行先制度の検討等、企業年金の再編は第二のステップ
に入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で11冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆、IFRSの概要、厚生年金基金改革と労働組合の
対応、年金ガバナンス体制の見直し・強化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 《最新版発売中!!》平成26年5月30日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)
 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 平成24年5月31日発行
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 本ハンドブックは、施行13年目を迎えた確定拠出年金制度が法律制定の趣
旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の一
翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加入
者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私たち
の活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理を
行いました。
 第I部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第II
部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提言、
第III部は制度の課題と展望について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、マッチング拠出等
が認められた法改正に対応し第3版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
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●次号(第138号)は10月1日に送信の予定です。
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