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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                    第139号 2015年11月2日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
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■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(122)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(13)
  日本版スチュワードシップ・コードについて(3)
 ★マーケットトピックス
  ECB、人民銀は金融緩和へ 日本はデフレ脱却正念場へ
 ★年金トピックス
  積立水準が76%と過去最高に
   ――2014年度退職給付会計・「年金情報」調査から
●年金相談の現場から(48)
  被用者年金一元化における経過措置について
●NPOアクティビティー
出版のお知らせ
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(122)
                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 生命保険文化センターが定期的に行っている「老後の生活資金を賄う手段」
という調査がある。直近のそれによれば、「60歳代」の生活資金では、9割
以上の方が公的年金を原資の一つにあげている。また預貯金や個人保険のよ
うな自助による手段がこれに続く。その次に来るのが「企業年金」や「退職
金」となっている。元サラリーマンの世帯であれば、企業年金や退職金が老
後の生活資金として極めて重要であることは言うまでもない。
 先般ファイナンシャルプランナーの研修会で伺った話はなかなか衝撃的で
あった。講師は退職金の運用をコンサルティングしている方で、最近実によ
くあるいくつかの相談事例を紹介していた。とりわけ筆者が目を丸くしたの
は以下の2点である。
 一つ目は、退職金を原資に毎月分配型投信を購入し、高い分配金を受け取
っているうちに、気づいたら元本が減少していたというもの。いまや「毎月
分配型ファンド」の8割が元本を取り崩して分配金の原資にしているという。
こういうことをその昔、確か「たこ足配当」と呼んだ。例えば年利1%の定
期預金に100万円預けて、1年後に2万円の分配金を手にしたからといって、2
%の運用収益と解釈する方はいないだろう。利息の1万円に元本を崩さなけ
れば2万円の分配金は作れない。あくまでも分配金は、利息や配当による「イ
ンカム収入」の範囲で抑えられるのが基本であり、それこそが投信購入者の
ニーズだと思うのだが、販売サイドからすれば「売れる」から「売る」とい
うことのようだ。
 目を丸くしたことの二つ目は、購入している投信の主体が、新興国の外貨
建て債券や先進国とはいえ格付けの低いハイイールド債ファンドであるとい
うこと。しかも為替ヘッジをしていないという。ご承知の通り、外貨建ての
有価証券を為替ヘッジなしで保有する場合、その収益の源泉は、(1)当該有
価証券の利息・配当、(2)当該有価証券の値上がり益、(3)為替差益の三つで
ある。債券であれば、当該国の金利が高いためにハイクーポンであり、金利
が低下傾向であり、当該通貨が円安に動いている場合には大変大きなリター
ンが得られるだろうが、逆ならばそれだけ大きな損失が発生する。老後の生
活資金原資として重要な退職金を、ずいぶんと「ハイリスク」にさらしてい
るのだな、と思った次第である。
 なんでもいいから増やしたい、というのが確かに人情であろう。しかし「投
資にフリーランチはない」し、「虎穴に入らずんば虎児は得られない」。け
れども老後の生活に、はたしてさらなる虎児まで必要なのだろうか。
 あなたが生活していく資金のうち、資産運用益からいくら賄うのか。その
運用収益を目指すためにとらなければならないリスクはどの程度で、それは
許容できるのか。もし難しいのならば、許容できるリスクの商品はなにか。
その場合商品の期待収益率はどの程度で、生活資金にはどのように影響する
のか。
 最終的には何らかの金融商品を選ぶとはいえ、その前に様々な思考のキャ
ッチボールが必要なのである。それはあくまでも自分自身の事情が反映され
た、自分たちにしかわからない本当のニーズといえる。そのニーズに合った
選択をするべきなのであって、それを知らない赤の他人である、販売業者の
推奨という「言いなり」になってはいけないのである。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOトピックス
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★今からでも聞いてみよう投資の話(13)――――――――――――――――
 日本版スチュワードシップ・コードについて(3)

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 前回に引き続きESG投資について見ていきます。その背景には年金積立金
管理運用独立行政法人(GPIF)が9月16日に国連責任投資原則(PRI)に署名
したことが象徴的な出来事だったからです。PRIとは2006年に国連主導で発
足した環境(E)、社会(S)、企業統治(G)を投資に際して配慮すること
を求めるもので、GPIFはその原則に遵守するとしたものである。大和総研の
調べによると9月末時点で世界の1,394機関が署名しているとしている。ESG
投資は投資パフォーマンスを上げる手段の一つとして考えられており、GPIF
も署名の理由として、「被保険者のために中長期的な投資リターンの拡大を
図る」ためとしている。一方で投資先となる企業はESGへの取り組みを強め
ることになろう。日本におけるESG投資の関心は残念ながら極めて低いため、
今後の動向に注目される。
 投資の判断材料に財務情報に加え、ESGのように非財務情報にも配慮する
という考え方は、古くは社会的責任投資(SRI)があり、1920年代に始まっ
たと言われる。2014年の世界のSRI市場は約21兆ドル、運用資産総額の約30
%を占めていると言われる。しかし、アジア域内では約530億ドル、同0.8%
の規模にとどまっており、その中の日本も普及しているとは言い難い。企業
側は非財務情報を企業の社会的責任(CSR)レポートや統合報告書、などで
開示しているが、まだ十分ではないと考える投資家も多い。GPIFがESG投資
に動き出すことで、他の機関投資家や企業に少なからず影響を与えると考え
られ、今後ESG投資への関心が高まることになりそうだ。
 ところで日本ではESG投資の資産規模がまだ小さいとは言え、そのパフォー
マンスに触れておかなければなりません。大和総研(2014年6月付け)では
以下(筆者抜粋要約)のようにレポートしている(注1)。

 (1)パフォーマンスが上がるかどうかは、イエスでもありノーでもある。
 (2)パフォーマンスとは株価なのか、企業価値なのか、投資期間は長期な
  のか、短期なのか、などにより状況は異なる。
 (3)長期的な企業価値にはプラスというのが定説、しかし短期的な企業価
  値や株価に対してプラスであるとは言い難い。
 (4)ESGの調査には財務評価とは全く異なる知識やノウハウが必要であり、
  こうしたコスト負担を吸収しなければならない。
 (5)ESGに配慮した株価のパフォーマンスは必ずしも良好な結果が得られて
  いない。
 (6)ESG情報の開示は投資の行為と車の両輪である。
 (7)日本のESG市場は現在のところ個人投資家が主体であり、今後機関投資
  家への広がりが必要である。年金基金、中でも公的年金基金の積極的な
  参加が望まれる。

 以上のように、ESG投資にはまだまだ課題が多いものの、欧米に比較して
遅まきながらも関心の芽が出始めようとしていることは、個人的には良い傾
向だと考えます。

 (注1)原典は「ESG投資 〜倫理としてのSRIから企業価値評価の手段と
して〜」(大和総研調査季報 2014年春季号 Vol.14)
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 ECB、人民銀は金融緩和へ 日本はデフレ脱却正念場へ

                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 昨年9月に米・FRBは追加の債券買入れ政策(QE3)を停止、緩和の規模を
維持しながら利上げのタイミングを窺うという政策変更を行いました。ファ
ンド等の、利上げに備えた緩和資金の引き上げとサウジの石油政策の変更に
加え、中国経済の変調、ドル高の影響もあって原油等資源・商品価格の大幅
な低下とそれ等への依存度の高い新興諸国の経済悪化をもたらしてきました。
今夏には、中国株式市場のバブル崩壊、人民元の突然の切り下げに端を発し
た世界同時株安があり、「世界経済と海外市場の動向が米国への影響を精査
するにはもう少し時間が必要」として、FRBは、9月の利上げ決定を見送りま
した。但し、全体的には好調を維持している米経済を背景に、イエレン議長
は9月24日の講演でも「FOMCメンバー(17人)の中で年内利上げを支持する
13人に、私自身を含む」と異例の発言を行って市場の先送り論を強く牽制し
ました。
 10月14日、発表の「地区連銀報告」では、総括判断で「米経済活動は引き
続き“緩やかに”拡大した」と指摘しました。“緩やかに”の表現が入った
のは約1年振りで、“減速感”を滲ませました。ただ、主力の個人消費は「穏
やかなペースで伸びた」と指摘、「景気への波及効果の大きい自動車販売は
全般的に増加」と分析、住宅販売も「全体的に改善」としています。今回の
調査が、丁度世界同時株安、人民元切り下げ、ドル高等金融市場混乱の最中
であった時期に当たり、製造業は「ばらつきはあるものの、全般的に弱含ん
でいる」と前回判断から切り下げました。
 10月2日、発表の9月米雇用統計は、非農業部門の雇用者数の増加が前月比
14万2000人に止まり市場予想を大きく下回りました。しかし、失業率は前月
と同じ5.1%、U6失業率も10.0%に低下、27週以上の長期失業者の割合も26.6
%に低下、雇用状況は大きく改善しています。但し、労働参加率が62.4%と
低い水準にあり、また平均時給が押し上げられていないなど数値が示唆する
ほど労働需給が引き締まっていないとも言えます。
 ここへ来て米経済は、製造業を中心に悪化の兆しが見え始めているのでは、
との懸念が出て来ました。9月の米・ISM製造業景況感指数は、50.2と辛うじ
て好不況の分れ目の50を維持しましたが、昨年8月の58.1以降、鈍化トレン
ドにあります。要因の第1は、「ドル高」の悪影響と思われます。景況感指
数の内、「輸出」は46.5と低水準であり、米国のグローバル企業には逆風に
なっています。第2は、「資源エネルギー産業での設備投資減少」の悪影響
が指摘されます。調査会社の発表では米国内の石油掘削リグの稼働数は10月
2日現在614基と昨年10月10日のピーク1,609基から大幅に減少しました。石
油掘削設備は一般機械から電気機械、素材、化成品等広範囲の産業に関連し
ます。第3には「中国経済の想定を上回る減速」です。米グローバル企業の
海外売り上げに逆風になりつつあり、例えば、キャタピラーは業績見通しを
大幅に下方修正し、全世界規模で従業員の9%に当たる1万人の人員削減を発
表しています。需要急減→商品価格急落→資源国・新興国の成長鈍化→投資
マネーフローの逆転・先進国回帰、世界的なリスク・オフ・モードという
“負の連鎖”につながりかねない懸念も少なくありません。
 こうしたなか、10月22日、ECBのドラギ総裁は、ECB理事会後の記者会見で、
「(12月の理事会について)我々は必要に応じて行動を起こす用意がある。
金融政策のいかなる手段も排除しない。各委員会に、様々な手段の良い点、
悪い点を検証するよう要請した。これは様子見ではない。仕事を進め、検証
してゆくものだ」と述べ、12月の理事会で追加緩和に踏み込むことがほぼ確
実になったと受け止められています。これを受けて、欧州の長短金利は一斉
に低下し、独国債は2年モノが(-)0.32%に、6年モノまでが(-)金利に低
下、また独DAX指数はじめ欧州株式市場も一斉に上昇しました。
 翌10月23日、中国人民銀行は政策金利を0.25%引下げ、預金準備率も0.5
%引下げて17.5%とする追加の金融緩和を発表しています。人民銀行は昨年
11月から断続的に政策金利の引下げを行っていて、8月に次いで6回目。「景
気テコ入れ」が目標とされています。
 さて、日本。“異次元緩和”は、70円/$の円高から120円/$への円安転
換をもたらし、多くの企業が最高益を更新する状況を作ったことで、久々の
ベースアップも行われ、所得向上→消費拡大の好循環も期待されました。し
かし、今夏以来の、中国・新興国経済の急減速や世界的な株価下落で陰りが
出始めています。毎月勤労統計では、7月に前年同月比が27ヵ月振りに(+)
転換しましたが0.3%、8月も0.2%の微増でした。中小企業で夏のボーナス
が伸び悩んだ影響が大きいとされ、個人消費を押し上げる効果は限られます。
 消費物価上昇率(CPI)は、8月の全国数値は、「総合」で0.2%の上昇、
生鮮食品を除く「総合」(コア物価指数)で(-)0.1%。9月の都区部の数
値では「総合」が(-)0.1%、コア「総合」で(-)0.2%に沈んでいます。
生鮮食品と値下がりを続けるエネルギーを除く「総合」は、0.6%上昇だが、
日銀の掲げる2%には程遠い状況です。ただ、生活実態により近いとされる
「東大日次物価指数」(税抜)は、この春以降上昇が続いていて9月20日の
週では1.6%、10月25日の週で1.53%の上昇で、いずれも政府統計より高く、
加工食品や日用品で輸入材料の値上がりを価格に転嫁するコストプッシュ型
のインフレが始まっているのではと懸念されます。所得の拡大と無関係な物
価上昇は経済の好循環には結びつかず中間層や年金生活者を含む低所得層の
打撃になっていることが明らかになってきました。
 更に衝撃を与えたのは、鉱工業生産指数の低下です。7月(-)0.1%、8月
(-)0.8%と2ヵ月連続の落ち込みで、内訳も「出荷」が減って「在庫」が
増加する現象で、経産省は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」と判断を
下方修正しました。10月1日発表の日銀短観でも大企業製造業の業況判断DI
は12と、3四半期振りの悪化です。9月30日のFT紙のインタビューに「景気後
退と呼ぶかはともかくとして日本経済は停滞している。中国経済の減速が日
本の景気に大きな影響を及ぼしており、停滞した経済を再加速させるのが大
きな課題だ」との政府関係者の発言が報じられています。
 FRBの利上げ先送り、ECBの追加緩和示唆、人民銀の利下げと預金準備率の
引き下げと来て、次は日銀が動く番という見方もあり、“デフレの脱却”に
は、大規模な「金融緩和」に支えられた「成長戦略」の実行が期待されると
ころです。
                        (平成27年10月27日記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
 積立水準が76%と過去最高に
  ――2014年度退職給付会計・「年金情報」調査から

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・AFP            植村昌機
 ◇◆◇
 「年金情報」では、東証1部上場会社が開示した2014年度の退職給付会計
をまとめた。2015年7月末時点で東証1部に上場している決算期が3月の一般
事業会社(金融・証券・保険を除く)1,222社の退職給付会計を集計した。
採用する会計基準の内訳は、国内会計基準が1,160社、国際会計基準が42社、
米国会計基準が20社。
 1,222社全体の積立状況をみると、退職給付債務に対する年金資産の積立
水準は76.4%で、2013年度末から3.5%上昇した。退職給付債務は5.8%増の
64.6兆円、年金資産は10.9%増の49.3兆円だった。積立水準は2006年でピー
クを打ち、リーマンショックに見舞われた2008年には56.9%まで低下してい
た。
 企業全体の退職給付債務の4分の1程度は一時金で占められているので、年
金制度のような積立型制度だけの退職給付債務も別途開示した968社のデー
タを調べたところ、積立水準は5.3%上昇し、96.8%に達した。
 積立制度の退職給付債務に対して年金資産が上回っている企業数も増えて
いる。資産が債務を超過した企業数は56%増の430社となり、全体に占める
比率は28.8%から44.5%と大きく拡大した。
 一般に積立水準が高まる要因は、退職給付債務の減少と年金資産の増加で
ある。2014年度は両方が増加した。退職給付債務は2014年度(国内会計基準
1,160社の場合)1.5兆円増加した。その主因は勤務費用(当期の退職給付債
務の増加額)の1.5兆円増加、退職給付債務に係わる数理計算上の差異1兆円
の増加である。減少要因としては、退職給付の支払額2兆円である。数理計
算上の差異1兆円は、2013年度の5.4倍に及んだ。
 この数理計算上の差異は将来の退職金支払額を現在価値に割り引くための
割引率の変動によって生じる。割引率は国債等の金利を参考に決めるので、
金利低下のため割引率は低下している。(10年国債の利回りは2014年度末
0.4%で0.24%下がった)
 2014年度末の割引率の単純平均値は、1.13%で前年比0.39%下がった。国
際会計基準と米国会計基準の採用企業1,222社でも0.39%下がり、1.17%と
なった。割引率を下げた企業は62%、据え置きが30%、引き上げ8%となっ
た。
 一方、年金資産は2014年度(国内会計基準1,160社の場合)は、26兆8600
億円で、前年比2.5兆円増加した。その主因は、年金資産に係わる数理計算
上の差異発生額2.3兆円の増加である。年金資産に係わる数理計算上の差異
とは、予め見積もっていた期待運用収益に対して、実際の運用利回りがどの
程度上回ったか下回ったかを示したもの。2014年度は前年に比し運用環境が
良好で、上振れ額が1.6倍に及んだ。
 運用利回り(期待運用収益+年金資産に係わる数理計算上の差異÷期初年
金資産額)は、該当項目を開示した960社の金額加重平均は11.65%と前年比
3%上昇した。年金資産の平均的な期待運用収益率は2%強。960社の平均値
は2.11%で期待値の9.5%程度上回った。
 年度末の資産構成比を開示した国内会計基準の960社の資産構成比の加重
平均を求めた。
 債券が0.5%低下して38.1%、株式が0.7%上昇の34%、一般勘定が0.7%
低下の14.5%、その他が0.3%増加して13.3%だった。国内株式のリターン
が約30%、海外株式が約24%なのに上昇幅が1%未満なのは、リバランスを
実施して株式比率を落としたと思われる。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■年金相談の現場から(48)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 被用者年金一元化における経過措置について
   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 ■年金相談の現場から(48)
 「被用者年金一元化における経過措置について」
 NPO金融年金ネットワー 1級FP技能士、社会保険労務士 小野 隆璽
 ◇◆◇
 平成27年10月に施行された「被用者年金制度の一元化法」について、これ
まで2回にわたり、その制度改正内容を説明させていただきました。
 私個人的な見解ですが、今回の改正は、昭和61年4月に実施された「基礎
年金制度の導入」以来の大きな改正だと感じています。それは、制度改正の
ほか、これを受けて、ワンストップサービスの実施や各種請求書・届書等の
変更も多数行われています。
 すなわち、昭和61年4月はいわゆる年金の1階部分の統合であり、今回は2
階部分の統合が行われたわけです。
 また、このような大きな制度改正を行うなかで、平成27年10月1日から、
直ちにすべてが変更されるわけではありません。この制度改正実施にあたっ
て、経過措置等も盛り込まれた中で実施されているのです。
 そこで、今回は、経過措置が設けられている「加給年金」と「在職支給停
止」について、以下に説明させていただきます。

 1. 加給年金の扱い
 (1)一元化法施行前から受給権が発生しており、単独では20年に満たない
 が、合計すると20年以上になるときは、一元化後に以下の年金額改定が行
 われたときに限り、加給年金が加算されます。
  *65歳改定時、退職改定時、離婚分割による標準報酬月額の改定時
 (2)一元化法施行前に加給年金が加算されていた人の配偶者が、2つ以上の
 加入期間を有する老齢厚生年金を受給している場合、単独では20年に満た
 ないが、合計すると20年以上になるとき、本来は加給年金額は支給停止さ
 れるのですが、支給停止されないよう経過措置が設けられます。なお、配
 偶者が65歳に達すると、その配偶者には振替加算は加算されません。

 2. 在職支給停止額に係る激変緩和措置について
 2つ以上の加入期間に係る老齢厚生年金が支給されている場合、これらを
合算したうえで支給停止額が決定され、この支給停止額を各実施機関に係る
厚生年金の額に応じて按分した額がそれぞれ支給停止されます。
 なお、新しい在職支給停止方法の対象となったことにより、従前の在職支
給停止額よりも多く支給停止を受ける場合には、以下の激変緩和措置がなさ
れます。

 〔1〕一元化法施行前に2つ以上の年金の受給権を有する人
 (1)平成27年10月1日において60歳以上65歳未満の受給権者
 改正後の本来の支給停止額(A)が、以下の算式による特例支給停止相当
額(C)を超える場合は、以下の算式による特例支給停止額(D)のいずれか
低い方が支給停止額の上限とされ、特例支給停止相当額(C)又は特定支給
停止額(D)をそれぞれの年金の額で按分した額が、それぞれの年金の支給
停止額とされます。
 【 基本月額≦28万円、総報酬月額相当額≦47万円の場合 】
 A=(総報酬月額相当額+基本月額−28万円)×1/2
 B= 改正前の厚生年金の支給停止額+改正前の共済年金の支給停止額
 C=(総報酬月額相当額+基本月額−B)×1/10+B
 D=(総報酬月額相当額+基本月額−B)−35万円+B
   *基本月額は、厚生年金、共済年金を合算した額です。

 (2)平成27年10月1日において65歳以上の受給権者
 改正後の本来の支給停止額(A)が、以下の算式による支給停止相当額(C)
を超える場合は、その支給停止額を上限とし、支給停止相当額(C)をそれ
ぞれの年金の額で按分した額が、それぞれの年金の支給停止額とされます。
 A=(総報酬月額相当額+基本月額−47万円)×1/2
 B= 改正前の厚生年金の支給停止額+改正前の共済年金の支給停止額
 C=(総報酬月額相当額+基本月額−B)×1/10+B
   *基本月額は、厚生年金、共済年金を合算した額です。

 〔2〕70歳以上(昭和12年4月1日以前生まれ)の老齢厚生年金の受給権者
 これまで、70歳以上(昭和12年4月1日以前生まれ)の人は、在職支給停止
の適用から除かれていましたが、一元化法により、これらの受給権者にも適
用がなされることになりました。
 これに伴い、施行日前から引き続き適用事業所に使用されている人又は共
済組合員である場合、施行後の在職支給停止については、上記〔1〕(2)と同
様の計算による支給停止額とされます。

 特に、在職支給停止額に係る激変緩和措置については、非常に難しいです
が、このような経過措置がなされているということを理解していただければ
よいのではないかと思います。
 ◆◇◆

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┃ ■NPOアクティビティー
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 《最新版・2015年版》 平成27年1月30日発売!! 好評 4月7日増刷出来!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2015年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
  共編
 A4判・138頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から10年以上が経過し、この
間、退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金
の代行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進
行してきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も個人資産の目標金額未達成、投資教育の内容・頻度、運用商品開発の
不足等、課題が発生しています。さらに、厚生年金基金改革法が2014年4月
に施行され、解散や移行先制度の検討等、企業年金の再編は第二のステップ
に入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で11冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆、IFRSの概要、厚生年金基金改革と労働組合の
対応、年金ガバナンス体制の見直し・強化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

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 《最新版発売中!!》平成26年5月30日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第3版)
 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 平成24年5月31日発行
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
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 本ハンドブックは、施行13年目を迎えた確定拠出年金制度が法律制定の趣
旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の一
翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加入
者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私たち
の活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理を
行いました。
 第I部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第II
部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提言、
第III部は制度の課題と展望について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、マッチング拠出等
が認められた法改正に対応し第3版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
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●次号(第140号)は12月1日に送信の予定です。
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