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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                    第152号 2016年12月1日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
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■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(135)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(26)
  運用の実際について(8) 〜スマートベータとは(続)〜
 ★マーケットトピックス
 トランプ政策の光と影 米国は長期停滞を脱却するか
 ★年金トピックス
  2015年度の確定拠出年金加入者運用利回りマイナス1.82%、
  8割がマイナス利回り
  ―2016年日経企業年金実態調査より
●年金相談の現場から(61)
 短時間労働者の厚生年金保険への適用拡大の影響について
●NPOアクティビティー
 出版のお知らせ
 ◇最新版・2016年版 平成28年3月25日発売!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2016年版
 ◇最新版・平成28年8月23日発売!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第4版)
 ―2016年法改正対応―

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┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(135)

                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 先月1日、前職でお世話になった某総合型厚生年金基金が、数十年の歴史
に幕を閉じた。その昔、企業年金の資産運用コンサルティングを事業化する
うえで、ひとかたならぬお世話になった常務理事の属した基金であり、総合
型基金業界では誰もが一目置く「名門基金」であったと言っていい。
 以前から何度も書いてきたが、厚生年金基金が解散する場合、まず初めに
「解散しよう!」という方針決議を代議員会で行う。次に各事業所の加入員
に、その解散方針に対する賛成の署名を集める。現在では加入員の三分の二
の賛成が集まれば、あとは粛々と解散の手続きを踏んでいくことになる。当
該基金の場合、解散の意向を決議したのは2015年2月の代議員会であったか
ら、およそ1年8ヵ月で解散認可に至ったことになる。
 ただし、この基金は同日付で後継制度としての「総合型企業年金基金」を
設立させている。このように、厚生年金基金を解散し、同時に企業年金基金
を発足させることを、基金業界では「ワンタッチ解散」と言っている。
 厚生年金基金が解散の方針を決議し、それを各事業所が社員である加入員
に説明する場合、後継制度という代替案が用意されているかいないかは、か
なり大きな意味を持つといえるだろう。当該厚生年金基金には、上場会社の
加入事業所があり、その方たちのほとんどが自社の制度に債務と資産を引き
取ると決めた。独自の企業年金制度があるところはそれでいいだろう。しか
し、独自の制度がない企業の場合はどうするか。その事例に応えるのが、後
継制度としての総合型企業年金基金である。今後はこういう制度がある、と
いう説明がセットであるのとないのとでは、厚生年金基金の解散に同意して
くれと説明する「会社側担当者」のメンタルも大きく違うはずだ。もちろん
加入員である従業員の側も。
 総合型厚生年金基金の解散ラッシュの陰で、こういった「ワンタッチ解散」
からの総合型企業年金基金設立という流れが、ここ数年はそれなりに出てく
ると思われる。ただし、総合型の数は、厚生年金基金のそれに対して、3分
の1程度となるのではないだろう、というのが、業界内での「相場観」であ
る。総合型企業年金基金の発足が、総合型厚生年金基金の3分の1であり、一
つの厚生年金基金から後継制度としての総合型企業年金基金へ移行する加入
員の数も3分の1くらいという見通しをよく耳にする。
 だがしかし、「基金」という組織は一つの空間を持つ。事務所スペースを
持ち、そこには職員スタッフが存在する。そういった固定費のコストがかか
る以上、発足した基金は次に「加入者」を増やす努力をしなければならない
はずである。
 厚生年金基金から企業年金基金になって、総合型の数が3分の1になるのな
ら、その基金には、「後継制度」を作らず解散した基金の加入事業所を「取
り込む」チャンスがあると解釈することもできる。中小企業にとっても、
 個人型確定拠出年金や中退共、あるいは今までは関係のなかった近しい業
界がメインの総合型企業年金基金など、退職年金制度の再構築へ向けたチャ
ンスは増えていくと思われる。また、そうあってほしいものだ。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOトピックス
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★今からでも聞いてみよう投資の話(26)――――――――――――――――
 運用の実際について(8) 〜スマートベータとは(続)〜

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 今回はスマートベータの具体的戦略に迫ります。身近なテーマから「配当」
という指標を考えてみましょう。上場企業は株主に対して収益の一部を配当
という形で支払います。その配当の利回り(年間予想配当金÷株価、%)が
高い高配当企業を集めたファンドを作ることにしましょう。現時点では、そ
のファンドは債券の利回りと比較して、高い利回りが得られることになりま
す。ただ、企業の株価が下落しては株式含み損を抱えることになりますから、
信用度の高い企業を組み込むなどして、株価の下落率を極力抑えたいもので
す。たとえば、過去減配もしくは無配をしていないか、身の丈以上の配当を
行っていないか、自己資本利益率が相対的に著しく低くないか、など、経営
の質も参考にしなければなりません。中長期的に高い配当利回りが確保され
るように、企業の選別に工夫が必要です。
 比較的近い発想に様々な株式指標を比較して、相対的に割安な企業を選別
する「バリュー」という考え方があります。たとえば、1株当たりの純資産
や同純利益、これらに前述した配当という指標などを考慮して、企業を選別
します。企業の株価の上昇や下落の幅が大きく、その値幅をとって利鞘を稼
ぐというよりは、中長期保有の運用スタイルに割安(バリュー)株の投資と
いうのは適していると考えられています。
 最後に「最少分散」という考え方を示しておきます。最少分散とは株価の
価格変動率を低く抑える戦略です。従来は、高い収益を得るためには負うべ
きリスクも高めにとる必要があると考えられていました。日経平均やTOPIX
に連動するような時価総額加重指数では、極端にリスクの高い企業の株価の
リターンはかえって低くなることが分かってきました。そうであれば、高い
リスクをとらずに中程度のリターンが取れればよいと考えると、最少分散タ
イプのスマートベータも注目してよいと考えられます。ただ、弱点は価格変
動率が低いために、市場全体が上昇する局面では、相対的に値上がり率が小
さくなる傾向があります。値上がり期待が大きいと失望するかもしれません。
 ところで、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用したJPX日経
インデックス400は、自己資本利益率(ROE)など経営の質を重視した
 スマートベータですが、比較的時価総額が大きく、誰もがよく知った企業
が選ばれているため、アベノミクス相場では強い上昇を示していました。一
方で、リーマン・ショックのような世界的な金融危機では下落率も大きくな
ると推測されます。JPX日経インデックス400の成績は算出開始日の2014年1
月6日以来の3年間弱で、日経平均株価とはほぼ同程度、TOPIXでは若干上回
っているように見られます。
 以上の例はごく一部ですが、投資スタイルによって採用するスマートベー
タは変えることができます。或いは、複数のスマートベータを組み合わせる
ことも有益ではないでしょうか。年金基金も国内株式でのスマートベータ関
連の運用残高はまだ少なく2〜3兆円規模と推定されていますが、着実に増え
ています。
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 トランプ政策の光と影 米国は長期停滞を脱却するか

                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 米大統領選は、巧みに世論を扇動した異端のトランプ候補が事前の予想を
覆して当選しました。共和党主流派を含む多くのワシントンの既成政治家や
大手メディア、ウォール街の市場関係者等が主導してきた自由な競争と貿易
で繁栄を目指す市場主義、グローバリズムが、移民の増加を生み、仕事を奪
い、経済格差を拡大したと考えて反発していた白人・低所得・ブルーカラー
層の人々が変化を求めて投票したことが勝利の理由として大きかったとされ
ています。クリントン候補がオハイオ、ミシガン、ペンシルバニア等五大湖
周辺の工業地帯、労働組合が強く長年民主党の地盤とされていた州で選挙人
の獲得に失敗したのが一例と言われています。
 「トランプ当選」は大きな“リスク要因”とされていました。優勢が確実
になった11月9日昼頃から日経平均は急落、919円安の大荒れになりました。
しかし、時差の関係で遅れて開くNYは256ドル高の18,589ドルで引けました。
選挙前のトランプリスクが、一転したのは当選後の初演説で「国民が一丸と
なって前進する時だ」と、穏やかな表情で、“まとも”な演説を行ったこと
が市場関係者に安心を与えたことが大きいとされています。
 トランプ氏の経済政策の柱は、「財政出動」(公共投資)、「大幅な減税」、
「移民抑制」、「保護貿易主義」で、「金融規制の緩和」や「化石燃料の利
用促進」(パリ協定からの脱退)等”?”の制作も多々ある。初演説で「都
市部のスラム化した地域を整備し、高速道路や橋梁、トンネル、空港、学校、
病院等のインフラを整備することは最重要課題だ」と、財政刺激によるイン
フラ投資を強調しました。
 減税は、中間層に対する所得税の減税に加えて、法人税減税(35%→15%)、
海外子会社の利益の本国送金時の法人税減税(35%→10%)、長期投資の値
上がり益、配当収入の減税等が伝えられています。議会が上下両院とも共和
党が過半数を握るだけに実現の可能性は大きく、確実に景気の活性化につな
がると思われます。
 課題になるのは、積極的な財政刺激によるインフラ投資、公共投資の拡大
です。大幅な国債発行は財政赤字を拡大させる方向です。現在、米景気は堅
調に推移していて「完全雇用」の状態にあり、賃金も対前年比で2.5%〜2.6
%程度の上昇(10月は2.8%)に転じています。住宅投資、個人消費も堅調
に推移していて12月のFOMCでは0.25%の利上げがSMEの先物指標では95%の
確率で織り込まれています。完全雇用状態にある中で財政刺激による公共投
資を拡大する訳ですから、インフレ期待から長期金利の上昇が懸念されます。
既に市場では、大統領選直前の1.85%から2.2%台に上昇しています。与党
共和党の伝統的政策は、「小さな政府」と「自由貿易」です。2017年夏頃に
は、来年度(2018年度予算)予算編成に絡み、連邦債務上限問題が持ち上が
り、小さな政府を党是とする共和党主流派や保守・茶会系との軋轢が強まり
議会対策が難航するリスクもあるとされています。
 移民抑制は、米国の伝統的価値観(アメリカン・ドリーム)と相容れない
ものです。低成長にあえぐ先進国の中で、米国がいち早く景気回復に漕ぎ着
け、金融緩和からの出口へ向かおうとしているのは、移民の継続的な流入に
より人口が増加し、住宅投資や個人消費の拡大により、GDP成長が続いてい
るからにほかなりません。現実的な着地点に向かうものと思われます。
 保護貿易主義も同様です。米国は基軸通貨のドルを輸出して世界中から商
品を大量に輸入して消費し、国民生活を向上させてきました。米企業も積極
的に海外投資を行い、自由貿易の下で発展してきました。TPPからの脱退は
条約発効前ですから米議会が批准をしなければ可能でしょうが、北米NAFTA
(1994年発効)からの脱退は20年以上続いてきた国際条約からの一方的脱退
になり国際信義上もまた、カナダ、メキシコとサプライチェーンを作ってき
た企業の利益を損ない現実的でないと思われます。ビジネスマン=トランプ
が交渉事の常としてのポーズとの見方もある様です。
 この様に、トランプ次期大統領の掲げる政策には“光”と“影”がありま
す。取り敢えず市場は光の部分を評価して株高・ドル高・金利高(債券安)
で推移しています。NYは、11月21日時点で、ダウ30種平均、S&P500指数、ナ
スダック、ラッセル2000の主要4指数が過去最高値を更新しています。ドル
も値上がりして対円は112円〜113円台の円安になっています。日経平均も18,
000円台と年初来高値の水準にあります。
 米国株の予想PERは18倍を超え、日経平均は大統領選後で2,000円以上上昇
して16倍台に接近、といずれも高値圏にあります。一方で、米長期金利の上
昇が継続しています。
 トランプ相場も転機に来ているように見えます。
                       (平成28年11月26日記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
 2015年度の確定拠出年金加入者運用利回りマイナス1.82%、
 8割がマイナス利回り
 ―2016年日経企業年金実態調査より

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・AFP            植村昌機
 ◇◆◇
 振興市場を含む上場・非上場企業で、企業型確定拠出年金制度(企業型DC)
を導入している企業や総合型DCを持っている厚生年金基金が調査対象。直近
1年間の運用実績である「15年度運用利回り」と、制度の発足当初から15年
度末までの「通算利回り(年利率に換算)」を聞いている。

 1. 15年度運用利回りは、5年ぶりに悪化、マイナス1.82%に。
 直近1年間の単年度利回りの単純平均はマイナス1.82%で、前回調査にお
ける14年度の利回り7.08%から一転した。単年度利回りの分布状況をみると、
ゼロ%未満が80.0%を占めた。マイナス3〜マイナス2%が3分の1強あった。

 2. 制度発足以来の通算利回りは、2.02%でプラスを維持。
 通算利回りの単純平均は、2.02%でプラスを維持した。しかし、前回調査
の4.52%を2.5%下回った。利回り分布で最も多かったのは、1.5%〜2%で
あった。

 3. 想定利回りは、1.81%と低下、8割が想定利回りを下回った。
 前回調査は、1.84%で0.03%低下した。2〜2.5%で全体の3割、2.5〜3%
が次いで多く、約6割が2%台であった。想定利回りと実際の運用利回りの関
係をみると、84.4%が15年度の単年度利回りが想定利回りを下回っていた。
前回調査では、想定利回りを下回ったのは3.8%にすぎず、関係が逆転した。
しかし、通算利回りでは、想定利回りを上回ったのが59.2%と、想定利回り
を下回った企業より多かった。

 4. 運用商品の配分状況は、元本確保型商品が54.5%。
 リスク性商品(投資信託等)は、前回より1.1%減少した。掛金配分は、
リスク性商品に40〜50%未満が多く、50〜60未満%が続く。リスク性商品に
掛金配分するが7割以上と3割未満とする回答が減少し、40〜50未満%とする
回答に集中した格好だ。

 5. 運用商品の採用状況、平均21.7本。
 採用率9割以上の商品は、国内株式のアクティブとパッシブ投信、外国株
式のパッシブ投信、内外債券のパッシブ投信、バランス型投信、定期預金、
保険商品であった。新興国株式投信、新興国債券投信の採用は、前回よりも
増えた。加入者が運用指図をしない場合に自動的に掛金を振り分ける「デフ
ォルトファンド」に元本確保商品を設定しているのは、61.1%で前回とほぼ
変わらなかった。
 運用商品の追加状況は、追加しているが55.1%と前回よりも増えた。しか
し、追加予定はないが89.7%と前回を5.5%上回った。改正法では、運用商
品の上限数を設定することになっており、その影響が出ている可能性もある。
一方、除外したい商品があるは前年を下回った。除外したい商品は、定期預
金、保険商品、バランス型投信であった。バランス型投信は、採用ニーズが
高まる一方、中には手数料が高いものや運用実績も振るわないものがあり選
別されているようだ。

 6. マッチング拠出の実施状況は、40.6%で3.2%増。
 実施する予定を加えると47.5%になり、認めていない44.7%を上回った。
加入者の利用状況は、10%未満が多いが、20〜30%が前年より増えているの
で、利用が拡大していると思われる。改正法が施行された場合、個人型に加
入するとマッチング拠出が認められなくなるので注意が必要だ。
 ◆◇◆

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┃ ■年金相談の現場から(61)
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 短時間労働者の厚生年金保険への適用拡大の影響について

   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 平成28年10月1日から、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険(社
会保険)の適用拡大がなされました。
 その適用対象となる人は、従業員500人を超える企業(特定適用事業所)
において、以下(1)〜(4)の基準のすべてに該当する人です。

  (1)週の所定労働時間が20時間以上あること
  (2)賃金の月額が8.8万円以上であること
  (3)雇用期間が1年以上見込まれること
  (4)学生でないこと

 この制度改正により、いろいろな影響が出ています。
 特に、これまでパート主婦が扶養の範囲内で働いていたケースなどでは、
大きく影響し、このまま社会保険に加入するのか、働き方を変えて社会保険
に加入しないようにするのか等々、悩み・検討された方も多数おられると思
います。
 また、他にも加入することによりデメリットになる人たちもおられます。
それは、すでに年金を受給している人たちであり、社会保険の適用拡大がな
されることによってデメリットとなってしまうケースが出てきます。
 そのため、前月のメールマガジンでは、障害者・長期加入者特例の特別支
給の老齢厚生年金を受給している人は、デメリットになってしまいますので、
ご紹介したとおり経過措置が公布されました。
 ところで、この適用対象となることによってデメリットになる他のケース
としては、障害厚生年金や遺族厚生年金を受給しているケースです。これら
の人は、老齢年金のように60歳〜65歳から受給するという年金ではありませ
んので、若くして受給されている人もおられます。それでは、以下にそのケー
スを紹介させていただきます。

 ●障害厚生年金を受給しているケース
 年金制度においては、二つ以上の年金を受給できる場合、一人一年金が原
則とされており、どちらか一方の年金受給を選択しなければなりません。
 たとえば、障害厚生年金・障害基礎年金(1級、2級)を受給している場合、
65歳になると老齢厚生年金・老齢基礎年金の受給権が発生しますが、どちら
か一方の年金を受給するか選択しなければなりません。一般的には、障害基
礎年金(1級、2級)を選択し、障害厚生年金(1級、2級)と老齢厚生年金は
金額や税等を考え、有利な方を選択します。
 すなわち、障害厚生年金を受給している人の場合、厚生年金保険に加入し
ても、65歳からそれに応じた老齢厚生年金・老齢基礎年金を受給しないこと
も出てきますので、加入のメリットがでないことが考えられます。
 なお、障害厚生年金(3級)を受給している場合、通常65歳になると老齢
厚生年金・老齢基礎年金の方に金額が多くなるため、社会保険加入のメリッ
トが出てきます。

 ●遺族厚生年金を受給しているケース
 遺族厚生年金を受給している場合、65歳から老齢厚生年金を受給できるよ
うになると、まず老齢厚生年金の受給が優先され、遺族厚生年金は、老齢厚
生年金額を差し引かれた残りの金額が支給されることになります。
 そのため、例えば60歳以降で厚生年金保険に加入した場合、自分の老齢厚
生年金額は増えますが、その増えた金額が遺族厚生年金から差し引かれるた
め、トータルの年金額としては、全く同額です。
 すなわち、遺族厚生年金を受給している人の場合、厚生年金保険に加入し
ても、65歳から受給できる年金額のトータルは変わりませんので、加入のメ
リットがでないのです。
 なお、遺族厚生年金受給の場合、自分の老齢厚生年金が多くなるようなケー
スでは、自分の老齢厚生年金の2分の1が増えるケースや遺族厚生年金が全く
支給されなくなるケースもでてきます。

 以上がすでに障害厚生年金や遺族厚生年金を受給している人にとって、平
成28年10月からの短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険(社会保険)
の適用対象となることによってデメリットになるケースですが、あくまで一
例であり、ケース・バイ・ケースと言わざるを得ません。
 言えることは、自分にとって将来の年金にどう影響するのか確認されるこ
とをお勧めします。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOアクティビティー
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
出版のお知らせ―――――――――――――――――――――――――――
 ◇◆◇
 《最新版・2016年版》平成28年3月25日発売!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2016年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 共編
 A4判・144頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から14年が経過し、この間、
退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金の代
行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進行し
てきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も個人資産の目標金額未達成、投資教育の内容・頻度、運用商品開発の
不足等、課題が発生し、改正法案が審議されています。さらに、厚生年金基
金改革法が2014年4月に施行され、解散や移行先制度の検討等、企業年金の
再編は第二のステップに入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で12冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆。掛金拠出の弾力化、リスク分担型DBの概要を
解説。確定拠出年金改正法の概要、厚生年金基金改革と労働組合の対応、年
金ガバナンス体制の見直し・強化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

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 《最新版》平成28年8月30日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第4版)
  ―2016年法改正対応― 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 本ハンドブックは、施行15年目を迎える確定拠出年金制度が法律制定の趣
旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の一
翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加入
者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私たち
の活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理を
行いました。
 第I部部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第I
I部部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提
言について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、2016年の法改正に
対応し大幅に書き直し、第4版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
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 書籍のお申し込み、お問い合わせ、ご質問、ご相談、研修会講師派遣のご
要望等ございましたら、下記までご連絡をお願い申し上げます。
 内容詳細は下記のURLをご覧ください。
 →http://kinyunenkin.jp/09syuppan.htm
 お問い合わせ、お申し込みは
 NPO金融年金ネットワーク事務局(
 または電話(03-5444-0539)、FAX(03-5444-0303)まで。

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●次号(第153号)は1月4日に送信の予定です。
【NPO金融年金ネットワーク・メールマガジン】
 企画・編集・発行:NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 協力:(株)格付投資情報センター
【メールアドレスの変更および配信中止/バックナンバー閲覧】
 → http://kinyunenkin.jp/08mailmaga.htm
【内容に関するご意見・ご感想】
本メールの送信アドレスは送信専用ですので、直接ご返信になることはでき
ません。ご意見・ご感想等は、下記アドレスまでお願い致します。
 → 
※禁・無断転載 このメールマガジンの著作権は上記発行者に帰属します。




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