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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                    第170号  2018年6月1日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
┃     フェイスブック https://www.facebook.com/kinyunenkin/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
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■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(153)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(44)
  スチュワードシップ・コード改訂について(4)
 ★マーケットトピックス
  景気拡大は継続するも、新興国の通貨下落で変調も?
 ★年金トピックス
  リスク分担型企業年金制度の導入にどう対応するか
●年金相談の現場から(78)
 平成30年扶養親族等申告書の記載内容等の変更について
●NPOアクティビティー
 1. 出版のお知らせ
 ◇最新版・2018年版 平成30年2月28日発売!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2018年版
 ◇最新版・平成28年8月23日発売!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第4版)
 ―2016年法改正対応―
 2. セミナーのお知らせ
 NPO法人DC協会主催「年金・退職金総合アドバイザー取得講座」

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┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(153)

                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 「個人型確定拠出年金(iDeCo)を始めて三か月が経過しました。そろそ
ろお得な商品についてレクチャーをお願いします」。
 昨年末にiDeCo加入についてコンサルティングをしたある方から、GW明け
に上記のようなメールを頂戴した。あくまでも個人的な見解であるが、iDeC
oにいざなった方々には、制度への加入だけでなく資産運用についても考え
ていただきたいと思っているので、リクエストの趣旨は大歓迎である。ただ
一つだけ気になったのは、メールにあった「お得な商品」という表現である。
 それは企業型DCがようやく普及し始めた頃のこと、当時担当していた某企
業年金基金の事務局の方が話してくれた。「先日、初めて社内の投資教育の
機会がありまして、なんと私が講師を務めたのです」。年金、そして運用と
くれば、企業年金の事務局の人間が社内関係者にイメージされるとうのはと
ても良いことだと思ったが、半ば強制的に集まった興味の程度も様々な一般
従業員の方々に、資産運用のイロハを説かねばならないというのは、なかな
か大変な務めであったことと想像する。株や債券の収益やリスクの特性、分
散投資の意義などの基本説明から、実際にラインアップされている商品の特
徴までを駆け足で説明したそうであるが、最後に募って出た質問が「講師の
あなたは何を買っていますか? なかなか難しいので、あなたが買っている
ものと同じものを買おうと思います。講師が買っているのだからいい商品な
のでしょう」だったそうだ。
 一見すごいことのように思われるかもしれないが、これは実は講師の立場
からすると講義の本質があまり通じていなかったのかと、ガックリくる問い
である。実際そういう意味で使われた「オチ」であり、お互い苦笑したのが
昨日のことのようである。
 投資の世界には「今の環境なら相場はこうあるべきでしょう」という理屈
立てはあっても、絶対というものはないというのが基本だと考える。ほとん
ど損はしないという言い方ができるケースはあるのかもしれないが、100%
儲かる、という他人の甘いささやきとは距離を置く。だからこそ分散投資を
する。
 こういった「基本的なスタンス」をまずはおさえておきたいものであり、
それを体感できる機会の一つがDC加入なのだと思う。
 金融庁が唱える「貯蓄から資産形成へ」を国民が享受するには、運用機関
がその腕をさらに磨くのはもちろんであるし、投資対象としての企業も株主
や債権者への責任をより意識しなければいけないだろうが、家計の立場でも
「投資について自分で考える」という意識改革をしていかなければならない
のではないだろうか。
 急がば回れという。てっとり早く「お得な商品」だけを教わるのではなく、
自分に合った資産運用はどのようなものなのか、を考えることがすべての始
まりなのである。冒頭のクライアント様には自立の材料をたくさんレクチャー
することになるだろう。
 ◆◇◆

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┃ ■NPOトピックス
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★今からでも聞いてみよう投資の話(44)――――――――――――――――
 スチュワードシップ・コード改訂について(4)

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 今回は資産保有者(アセットオーナー)が、スチュワードシップ活動にど
う取り組むべきかをまとめたいと思います。既に相応の対応スタッフがいれ
ば一つ一つ解決していけばいいのでしょうが、そうでない時はどうするのか、
などアセットオーナーの現時点での対応を見ていきます。
 アセットオーナーはこれまでも見てきたように「資産保有者としての機関
投資家」という位置づけになります。ところが、現実はアセットオーナー自
身が資産運用しているケースは多くなく、大半がプロの運用機関(機関投資
家)への委託運用になっています。このことは日本最大の公的年金資産保有
者である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)といえども同様です。し
たがって、委託先の機関投資家を通じてスチュワードシップ活動を行うとい
うことになります。具体的には機関投資家に対して、アセットオーナーが考
えるスチュワードシップ活動の原則を示す、機関投資家の活動をモニタリン
グする、機関投資家の評価を行う、などが主たるものと整理することができ
ます。つまり、アセットオーナーは機関投資家のスチュワードシップ活動が
いかに実行されているかの管理をするともいえるでしょう。
 以上を言い換えると、アセットオーナーはスチュワードシップの責任を認
識する、機関投資家がスチュワードシップの責任を果たしているかを確認す
る、機関投資家が投資先企業と対話し十分理解しているか確認する、などと
なります。こうした過程を踏まえつつ、アセットオーナーは長期的視点に立
ち、企業価値向上に取り組むことで、結果として受託者責任が果たされると
するものです。
 一方で課題も整理しておくと、人員の不足、作業負担の増加、コスト増の
ほか、合同運用(各々の企業年金資産を同一のファンドで運用すること)で
は、個々の企業年金基金の意向が反映されにくいのではという懸念、運用コ
ストが低いことが特徴のパッシブ運用にコストをかける必要性があるのか、
などが挙げられます。
 最後にGPIFの「スチュワードシップ活動原則(平成29年6月1日制定)」を
お示しして、スチュワードシップ・コードの説明を終わりにします。GPIFの
同原則は以下のとおりです。

 1. 運用受託機関におけるコーポレート・ガバナンス体制
 2. 運用受託機関における利益相反管理
 3. エンゲージメントを含むスチュワードシップ活動方針
 4. 投資におけるESGの考慮
 5. 議決権行使

(参照)GPIF「平成29年 スチュワードシップ活動報告(平成30年2月2日
公表)」
 http://www.gpif.go.jp/operation/pdf/voting_h29.pdf
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 景気拡大は継続するも、新興国の通貨下落で変調も?

                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 5月に入り、金融市場ではこれまでとは違った“潮目の変化”とも取れる
現象が見られ始めました。
 5月16日、米10年国債利回りが約6年10ヵ月ぶりの3.126%を記録。原油先
物価格もWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)6月渡しが約3
年5ヵ月ぶりに71ドル台に乗せました。為替市場でもドルの方向性にこれま
でとは異なる変化が現れ始めたとされます。例えば、ユーロは昨年初めに記
録した、1ユーロ=1.03ドルから今年2月の1.25ドル台までユーロ高ドル安が
続いていましたが、4月以降、ユーロ圏政治、経済の先行き不透明感を材料
にユーロが売られる展開になって来ています。また、ドル円相場も昨年初め
の118円台から今年3月の104円台までドル安円高が進みましたが、此処へ来
てドル高円安へ転換して110円台に定着しそうな気配になってきました。
 このドル高・米長期金利の上昇は、新興国通貨の売りを誘発しています。
アルゼンチンは自国通貨防衛のため大幅な利上げに踏み切りました。トルコ、
インドネシア、マレーシア、インドは自国通貨防衛の為替介入に追い込まれ
ました。ポーランドやメキシコの通貨も大きく下がりました。
 米国の大規模な金融緩和で有り余るドルが、大量に新興国へ流入して、新
興諸国の経済成長を支えて来ました。しかし米国の金利上昇、ドル高を見て、
ドルが新興諸国から米国へ還流を始めたことが原因と言われています。新興
諸国が、自国通貨防衛のために金利の引き上げ、為替調整に向えば、当然国
内景気は減速の方向へ向かいます。また原油価格の値上がりは、石油を輸入
に頼るアジアの新興国にとって大きな負担増になります。新興国経済の成長
率鈍化が世界経済の成長率鈍化につながるのではないかとの懸念も浮上して
きました。ポール・クルーグマン教授も、「悪循環に陥り、傷口が広がった
97〜98年型の危機を思い描くことが少なくとも可能になった」、「通貨が下
落し企業債務が破裂、景気が圧迫され、一段の通貨安に繋がった」、「次の
世界金融危機の始まりかといえば、恐らくそうではない。そのような危機の
兆候は見られないと言って来た。しかし、何か恐ろしいものが迫っている」
とコメントしています(ブルームバーグ:5月24日付)

 さて、米国の景気・経済の実勢は、1〜3月期、GDP成長率は年率2.3%と前
期の2.9%からは減速したものの前期が高かったことと、季節的に減速の傾
向がある四半期なので、どちらかというと依然“強い”といえましょう。唯、
最近の物価上昇の要因は、拡張的財政政策によるインフレ期待の亢進、原油
の値上がりによるとされ、賃金上昇→消費拡大→景気拡大・金利高の“良い
インフレ”とは言えないところが問題でしょう。
 トランプ政権は昨年末に大幅な減税法案を成立させ、1月には、連邦政府
の債務上限の引き上げも議会に認めさせることに成功しました。当初は、20
18年が米経済のピークと見られていましたが減税、財政出動、規制緩和等に
よって拡大は2019年まで続くとの見方が増加しています。
 FRBは利上げと資産縮小を確実に進めていて、6月のFOMCでも利上げが予想
され、金利先物市場では100%利上げが織り込まれているとされます。秋口
と12月に、もう1〜2回行い、今年は年3〜4回の利上げが予想されています。
金利の引き上げ、資産の縮小は景気の減速、期待リターンの低下に対応する
株式市場での価格調整として、株価にとって厳しい局面に向かうことが予想
されます。但し、5月23日公表された5月のFOMC議事録によれば、当局者は、
「インフレ率が目標から若干オーバーシュートしても問題ないとの認識を示
し、より積極的な引き締めは急いでいない」と示唆しています。
 国内に目を転じれば、5月16日、内閣府から発表の1〜3月期の実質GDPは前
期比マイナス0.2%(年率換算マイナス0.6%)と9四半期ぶりのマイナス成
長に沈みました。日本が他国に比べひときわ悪くなったのは内需の弱さとい
えます。個人消費の低迷は天候による生鮮食品の高騰、株安・円高による消
費者心理の悪化に加え、携帯電話と自動車への支出減、外食の手控えが大き
かったとされます。
 想定外は設備投資の大幅減で、マイナス0.1%。市場予想平均のプラス0.4
%を大きく下回りました。通信機器関連がスマホの停滞で不振で、それが影
響しました。住宅投資も相続対策のアパート建設が峠を越えてマイナス2.1
%に沈みました。唯、実質雇用者報酬が前期比0.7%増と再びプラスに転じ
たことは明るい材料です。

 秋の中間選挙を控えたトランプ大統領は、貿易赤字の最大相手国中国との
交渉の難しさもあってか、5月23日、通商法232条の「安全保障上」の理由を
つけて現在2.5%の自動車の輸入関税を(最大で25%。WSJ報道)課す方向で
検討に入ると表明しました。現地生産比率を高めて来ているとはいえ日本の
自動車各社へは大きな打撃になります。中国と違って安全保障上米国依存の
日本にとっては、交渉は難題で現地生産比率の一層の拡大に加えて、税率引
き下げ交渉、数量規制、為替調整、思い切って米国債の購入など、策を繰り
出しての交渉が必要になるでしょう。難しい局面に入ってきました。
                      (平成30年5月29日 記)
 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
 リスク分担型企業年金制度の導入にどう対応するか

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・ファイナンシャルプランナー
                             植村昌機
 ◇◆◇
 リスク分担型企業年金は、確定給付企業年金(DB)及び確定拠出年金(DC)
双方の性質を併せ持つハイブリッド型(混合型)として、将来発生するリス
クを労使でどのように分担するかをあらかじめ労使合意により定めておく仕
組み。具体的には、事業主がリスク対応掛金をあらかじめ上乗せ拠出するこ
とで「事業主によるリスク負担部分」とし、当該リスク対応部分では対応し
きれない積立不足の発生を「加入者、受給者によるリスク負担部分」とする。
これにより、平常時は負債を超える掛金拠出を企業に義務付ける一方、積立
水準に応じて給付を増減することにより財政均衡を図る。
 平成17年1月より導入可能となったが、2018年4月現在、4社が導入してい
る。企業会計上、確定拠出年金と同様に退職給付債務の認識が不要のことか
ら導入が進むと思われる。
 1. リスク分担型企業年金への移行する際の留意点
 (1)財政悪化リスクを企業と従業員、受給者でどのように負担するか?
 企業がリスク対応掛金として多く拠出すれば、積立不足は発生しにくくな
り給付の減額も回避する可能性が高まる。逆に、掛金拠出を少なくすれば給
付の減額の可能性が高まる。従来のDBに比べて、掛金は増加する。十分な負
担ができない場合は、一部を移行し、従来のDBとの併用やDC等の他制度との
併用を検討すべきである。

 (2)従業員、受給者へのコミュニケーション、ガバナンスの強化が必要
 従業員等には給付の増減の可能性があるので事前の十分な説明が求められ
る。制度設計の段階から労働組合や従業員代表に検討に参加してもらう措置
が必要であろう。また、導入後も加入者、受給者が参画する委員会等を設置
して、ガバナンスを強化する。外部のコンサルタントの助言も必要であろう。
特に受給者は不利益変更の可能性もあることから、希望者には移行前の給付
を一時金で支給する措置が必要である。受給者については、従来型DBの閉鎖
型として存続も可能であるため不利益を生じない移行方法も検討すべきであ
る。また、給付が増減する部分を一部に限定し、一部移行することで従業員
等の理解を得られ易くすることも検討すべきである。

 (3)慎重な制度設計等の検討
 移行に当たっては、掛金負担、従業員等への影響、他制度との比較、併用
等多岐にわたる検討が必要となる。また、仕組みが複雑なので専門家の助言
や財政計算、会計上の試算なども不可欠になる。このため、十分な時間をか
け慎重に検討が必要である。

 2. 同一規約におけるリスク分担型と従来型DBの併用
 リスク分担型企業年金は固定された掛金拠出に基づく財源により給付が定
まるものであり、帰属する財源を明確に特定しなければならない。また、利
害関係が異なっているので同一のガバナンスでは正常な意思決定が行われな
い可能性がある。原則として両制度の併用は認められないが、以下の措置を
講じた場合のみ許容される。

 (1)リスク分担型と従来型DBのそれぞれで経理するとともに、資産を区分
する。

 (2)基金型の場合、代議員会の下にリスク分担型の意思決定に係る委員会
を設け、当該委員会の意思決定を尊重した上で代議員会における決議等をす
る。

 3. 従来のDBとリスク分担型企業年金の移行時等の手続き要件
 (1)従来のDBからリスク分担型企業年金に移行する場合、又はその逆の場
合の手続きについて、給付減額に該当する場合は、現行の給付減額の手続き
を適用する。
 <加入者の給付減額>加入者の3分の1以上で組織される労働組合の同意の取
得と加入者の3分の2以上の同意の取得
 <受給者の給付減額>全受給者に対する、事前の十分な説明。受給者の3分
の2以上の同意の取得。希望者に減額前の給付を一時金で支給。
 <現行の給付減額の判定基準>  ●給付設計の変更前後の総給付現価が減少する場合
 ●一部の加入者や受給権者等について、当該者に係る給付現価が減少する
場合
 ●各加入者や各受給権者等の最低積立基準額が減少する場合
 のいずれかに該当する場合に給付減額と判定

 (2)リスク分担型企業年金における減額判定の考え方
 リスク分担型企業年金では、掛金を変更し掛金収入現価が減少した場合に
は、給付の原資が減少し、減額調整の可能性が高まるので、給付減額と判定
する。

 (3)従来のDBとリスク分担型企業年金の移行時の減額判定
 従来のDBからリスク分担型企業年金へ移行する場合、将来発生するリスク
のうち、掛金収入現価等で措置されている割合が1月2日を下回っている場合
は、減額調整の可能性が高いため給付減額と判定する。

 (4) 従来のDBとリスク分担型企業年金の移行時に給付減額に該当する場合
は、現行の給付減額の手続きを適用する。また、給付減額に該当しない場合
でも、リスク分担型企業年金への移行は給付の性質を大きく変更するもので
あるため、受給者に対しては、給付減額に準じた相応の手続き要件を設けて
いる。
 不利益変更の可能性があることから、受給者についてのみ、以下の手続き
を課す。
 ●全受給者に対する事前の十分な説明
 ●希望者には、年金給付に代えて移行前の給付を一時金で支給
 ※受給者については閉鎖型DBとして既存の制度を維持し、移行時点の加入
者のみリスク分担型企業年金へ移行することにより、不利益が生じない取り
扱いをすることも可能。
 ◆◇◆

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┃ ■年金相談の現場から(78)
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 平成30年扶養親族等申告書の記載内容等の変更について

   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 平成29年税制改正(平成30年に支払われる年金から適用)により、配偶者
控除の要件が変更となり、平成30年分扶養親族等申告書に新たに「配偶者の
区分」欄等が追加されました。
 この変更に伴い、平成30年分扶養親族等申告書(以下「申告書」という。)
の記載内容に多数の漏れや不備があり、平成29年11月以降、不備等の対象者
には「返戻」がなされました。申告書の送付件数は、700万件超ですが、返
戻が約160万件のため、約4分の1が返戻されたことになります。また、その
うち約100万件が配偶者欄の「配偶者の区分」の記入漏れや記入誤りでした。
 そして、この返戻に対して、再提出されたが記載内容に不備等があった方
や再提出されなかった方が多数おられたために、4月半ばに、分かりやすい
様式で「再度のお知らせ」がなされました。また、申告書も以下のような変
更がなされました。

 1. 税制改正に伴い、申告書の様式を大幅に変更したため、未提出の方が
多数おられたこともあり、省令改正が行われ、受給者本人の個人番号の記載
を不要とし、番号が確認できる書類のコピーも添付不要とされました。

 2. 配偶者、扶養親族等の個人番号については、引き続き記入が必要です
が、これまでの個人番号欄を削除し、申告書裏面の摘要欄に個人番号を記入
することになりました。

 3. 受給者本人の所得欄を設け、所得が900万円を超える場合のみチェック
をする様式となりました。

 4. 扶養親族等の所得欄は38万円以下か、38万円超えかを選択する様式と
なりました。

 以上のように、申告書の変更はなされましたが、基本的には申告する記載
内容をキッチリと理解していなければ、来年分以降も記載内容の不備等が発
生するものと思われます。
 そこで、配偶者控除の要件変更を受けて、公的年金等の源泉徴収における
控除の対象となる配偶者の要件について、今後とも理解しておくべき重要な
改正ですので、再度説明しておきます。
 〇源泉控除対象配偶者として、配偶者控除に該当する要件
   ⇒受給者本人の所得が900万円以下、かつ、配偶者の所得が85万円
     以下の配偶者
 〇老人控除対象配偶者として、配偶者控除に老人該当分が加算される要件
   ⇒受給者本人の所得が900万円以下、かつ、配偶者の所得が38万円
     以下の70歳以上の配偶者
 〇障害者に該当する同一生計配偶者として、障害者控除に該当する要件
   ⇒所得が38万円以下の障害者に該当する配偶者
     *この場合、受給者本人の所得の制限はありません。

 今回の申告書の記載内容の漏れや不備の問題の要因については、個人番号
記載や税制改正に伴い、申告書の様式を大幅に変更せざるを得なかったとこ
ろにあり、かつ、年金受給権者は当然老人が多く、この変更に対応できなか
ったところにあります。
 なお、返戻された場合でも申告書を提出すれば、ある時期までは2月支払
分まで遡って源泉徴収額の再計算が行われ、年金支払分のなかで税額の還付
が行われます。このため、遅れても提出することが重要です。ただし、ある
時期を過ぎると、年金から還付が行われませんので、そのときは来年の確定
申告を行えば税額の精算が行われ還付されることになります。

 最後に私の個人的な感想ですが、老人にとっては対応が難しい方々も多数
おられます。税制改正等により大幅な申告書の変更をしなければならない場
合、もう少しサポート体制等、何とかならないものかと感じました。
 ◆◇◆

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┃ ■NPOアクティビティー
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1. 出版のお知らせ ―――――――――――――――――――――――――
 ◇◆◇
 《最新版・2018年版》 平成30年2月28日発売!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2018年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 共編
 A4判・140頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から16年が経過し、この間、
退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金の代
行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進行し
てきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も、2016年6月より普及の拡大に向け改正法が施行されています。さら
に、厚生年金基金改革法が2014年4月に施行され、解散や移行先制度の検討
等、企業年金の再編は第二のステップに入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で14冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆。掛金拠出の弾力化、リスク分担型企業年金の
概要を解説。確定拠出年金改正法の概要、年金ガバナンス体制の見直し・強
化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

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 《最新版》平成28年8月23日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第4版)
 ―2016年法改正対応― 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 A4判・122頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 本ハンドブックは、施行16年目を経過した確定拠出年金制度が法律制定の
趣旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の
一翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加
入者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私た
ちの活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理
を行いました。
 第I部部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第
II部部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提
言について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、2016年の法改正に
対応し大幅に書き直し、第4版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 書籍のお申し込み、お問い合わせ、ご質問、ご相談、研修会講師派遣のご
要望等ございましたら、下記までご連絡をお願い申し上げます。
 内容詳細は下記のURLをご覧ください。
 →http://kinyunenkin.jp/09syuppan.htm
 お問い合わせ、お申し込みは
 NPO金融年金ネットワーク事務局(
 または電話(03-5444-0539)、FAX(03-5444-0303)まで。
2. セミナーのお知らせ ―――――――――――――――――――――――
 NPO法人DC協会主催「年金・退職金総合アドバイザー取得講座」

 年金制度全般にわたる基本的な知識が身に付きます。労働組合、企業、年
金基金などで年金業務に係る方々の受講をお勧めします。当NPOが講師を務
めます。

 ●「企業年金制度の概要」6月13日
 ●「企業年金制度の再編」6月20日
 ●「確定拠出年金の制度設計と運用、教育に係る法制度」7月4日
 ●「確定拠出年金における運用と教育の考え方」7月11日

 いずれも18時30分から2時間。会場は御茶ノ水「中央大学駿河台記念館」
 お申込み、お問い合わせはDC協会、
   電話 03-3222-6113
   メール master@nenkinnet.org

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●次号(第171号)は7月1日に送信の予定です。
【NPO金融年金ネットワーク・メールマガジン】
 企画・編集・発行:NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 協力:(株)格付投資情報センター
【メールアドレスの変更および配信中止/バックナンバー閲覧】
 → http://kinyunenkin.jp/08mailmaga.htm
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