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┃       金 融 年 金 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン

┃                    第177号  2019年1月4日
┃   NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク メールマガジン
┃             ホームページ http://kinyunenkin.jp/
┃     フェイスブック https://www.facebook.com/kinyunenkin/
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 このメールマガジンは、「連合」と提携して、労働組合・勤労者の立場
 から退職給付制度に関するコンサルティングや投資教育を展開している
 「NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク(略称:NPO金融年金
 ネットワーク)」が企画・編集・発行するものです。金融・年金に関す
 る情報や意見交換のスペースをご提供することを目的にしています。企
 画・編集には(株)格付投資情報センターのご協力を頂いています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■ 目次 ■■
●特集レポート
 企業年金コンサルティングの現場から(160)
●NPOトピックス
 ★今からでも聞いてみよう投資の話(51)
  コーポレートガバナンスについて(7)〜SDGsについて〜
 ★マーケットトピックス
  株式市場は年末大波乱 改元の年 期待を込めて
 ★年金トピックス
  確定拠出年金(企業型)加入者の17年度運用利回り2.93%、
  通算利回り2.53%」
  ―「確定拠出年金の運用状況」2018年日経企業年金実態調査より
●年金相談の現場から(85)
 平成30年度税制改正と年金制度について
●NPOアクティビティー
 出版のお知らせ
 ◇《最新版・2018年版》 平成30年2月28日発売!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2018年版
 ◇《最新版》平成30年6月29日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第5版)
 ―2018年法改正対応―

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■特集レポート
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 企業年金コンサルティングの現場から(160)

                (株)武南企業年金事務所代表 坂井信夫
 ◇◆◇
 新年あけましておめでとうございます。平成最後の年明けでありますが、
皆様にとりまして充実の年となりますように心から祈念申し上げます。

 先々月先月と公的年金に関する話を書いてきたが、今回はひとまずその最
後である。公的年金制度への不満や不安をあおる論調で個人的に最も疑問を
持つのが保険料と年金給付額との損得論である。ある世代は保険料総額に対
して○倍の年金給付が受けられるのに、若い世代は……、という報道を目や
耳にされた方は多いだろう。
 まず一つの現実を簡単に検証しておこう。平成30年の国民年金保険料の月
額16,340円を40年(480ヵ月)納付すれば、その負担総額は784万3,400円で
ある。本年の国民年金の満額は77万9,292円なので、65歳から10年超受給す
れば「払い損」にはならない。もちろん満額年金の水準が今のままであると
は限らないが、少なくとも平均余命まで人生をまっとうすれば、少なくとも
「勝ち組」は堅いのではないだろうか。
 社会保険により運営される社会保障制度は、社会の構成員同士が互いに助
け合う「相互扶助」の精神を制度設計のベースにしている。そんな相互扶助
の原理は、例えば民間の死亡保険などと理屈は同じである。
 皆さんは民間の死亡保険に加入されているだろう。その動機は「明日明後
日とは思わないが自らに不慮の死がおとずれた際に、大切な家族に経済的な
負担をかけさせないため」ではないだろうか。ところがそんないつ死ぬかわ
からない個々人も「集団」として扱うと、確実に一定の比率の方に「死」は
おとずれている。だから色々な意味で保険は「成り立つ」わけである。こう
いった相互扶助の制度である死亡保険に、例えば会社の同期と一緒に加入し、
その数年後に同期がなくなって死亡保険金を受け取ったとする。その一方で
自分は以降10年間その保険に加入し続け、しかしまだ生きている、という状
態にあったとしたら、果たして自分は損をした、と思うかといえば答えはNO
だろう。
 あらためて老齢年金がもつその「保険」機能とは何かといえば、それは高
齢によって労働などの「収入を得ることができないがいまだ生存している」
という「事故」に対する保険であるといえよう。よって、死亡した時にその
保険金としての「年金給付」が停止になるのは、決しておかしいことなので
はない。厚生年金制度は「厚生年金保険法」という法律に依拠する制度であ
ることは忘れてはならない事実なのである。
 お互いを助け合う相互扶助の制度としての公的年金の世界に個々人間の「損
得論」を持ち込むことにはそもそも疑問である。強いて言えば、選択の余地
のない強制加入の制度であるということが、損得論に惹かれる要因なのだろ
うと想像するものである。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■NPOトピックス
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★今からでも聞いてみよう投資の話(51)――――――――――――――――
 コーポレートガバナンスについて(7)〜SDGsについて〜

          NPO金融年金ネットワーク 証券アナリスト 塩見雅史
 ◇◆◇
 前々回に触れたSDGsのお話です。SDGsは2015年に国連で採択された持続可
能な開発目標をいい、2030年までに達成させる17の国際目標(ゴール)と16
9のターゲット、232の指標を決めています。SDGsの特徴は先進国・途上国共
に適用する普遍性、だれ一人取り残さない包摂性、すべてのステークホルダー
の参画型、定期的にフォローアップを行う透明性、経済・社会・環境の3つ
の統合性、などです(外務省)。わが国でも政府や経済界などが積極的に取
り組み、外務省では「SDGsを通じて豊かで活力ある未来を創る」というスロー
ガンを掲げています。前身は2001年に策定されたミレニアム開発目標MDGsで
あり、2017年12月にはジャパンSDGsアワード(第1回)の授賞式が行われ、
民間上場企業では住友化学株式会社、吉本興業株式会社、株式会社伊藤園、
などが表彰されました。一方で、目標が多すぎる、法的拘束力がない、など
の課題もあるようです。

 ところで17のゴールとは、貧困をなくす、飢餓をゼロに、すべての人に健
康と福祉を、質の高い教育を、ジェンダー平等の実現、安全な水とトイレを、
エネルギーをみんなにクリーンに、働きがいと雇用、産業と技術革新の基盤
を、不平等をなくそう、持続可能なまちづくりを、作る責任と使う責任、気
候変動への対応、海の豊かさを守る、陸の豊かさを守る、平和と公正、パー
トナーシップで目標の達成を、となっています。

 政府の取り組みも示されてはいますが、ここでは企業の取り組みについて
見ていくことにします。経団連は2017年11月に企業行動憲章改定の際、「So
ciety 5.0の実現を通じたSDGsの達成」という副題を掲げました。これはSoc
iety 5.0という未来社会において、経済成長と様々な社会的課題の解決はSD
Gsの理念と一致するものだとしています。すなわち、企業が事業活動にSDGs
を取り込むことで、企業と社会の「共通価値の創造」(CSV)が生まれ、そ
の取り組みが成功すれば企業価値が持続的に向上することを期待しています。
先進事例も多く、その中でイオンはサプライチェーンでの食材の調達に関し
て、2003年に「イオンサプライヤー取引行動規範」を作り、遵守を要請して
います。またご参考のために、ジャパンSDGsアワードを受賞した上場企業3
社のSDGsに対する取り組みを掲載したサイトを以下にお示しします。

 住友化学株式会社;
 https://www.sumitomo-chem.co.jp/sustainability/sdgs/contribution/
 吉本興業株式会社;
 http://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/
 株式会社伊藤園;
 https://www.itoen.co.jp/csr/csrpolicy/

 (注)Society 5.0とは狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に次ぐ5
番目の未来社会で、サイバー空間とフィジカル空間とを融合させた社会をい
う。これは科学技術基本法の第5期(2016〜2020年)に登場した。
 ◆◇◆

★マーケットトピックス―――――――――――――――――――――――
 株式市場は年末大波乱 改元の年 期待を込めて

                 NPO金融年金ネットワーク
                 DCアドバイザー・CFP   宮本一弘
 ◇◆◇
 明けましておめでとうございます。昨年は、1年を代表する漢字が「災」
であったように、西日本豪雨や台風、大阪北部と北海道の地震など、大きな
自然災害が発生しました。被害に遭われた方々へは一日も早い立ち直りをお
祈り申し上げます。
 さて、昨年の米株式市場は12月24日、大きく下落しました。NYダウは10月
3日の26828.39ドル(終値)の史上最高値から21792.20ドルへ5036ドルの値
下がり、S&P500指数も9月20日の2930.75から24日の2351.10まで19.8%の大
きな値下がりになりました(後年、“クリスマス暴落”と言われる?)。
 トランプ減税と財政出動、低い失業率と賃金上昇にもかかわらず生産性の
向上から小売価格の上昇が抑えられて、実質所得が増加、「個人消費」が牽
引して米国経済は依然好調を保っています。金利の上昇と価格高騰から住宅
市場と自動車市場に減速感は見られますが、景気の足を引っ張るまでには至
っていないとされます。
 ただ、12月3日には米債券市場で、米国債の3年物(2.838%)と5年物(2.834
%)の利ザヤが一時的ですが逆転する現象(“逆イールド”現象)が生じま
した。長短の金利差を表す代表的な指数は「2年物」と「10年物」の利回り格
差ですがその差は“順ザヤ”とはいえ0.14%まで縮小しました。一般には、
逆イールド現象は、その後1.5年から2.0年のタイムラグを経て景気が後退局
面に入るとされ、景気のピークを表しているとされています(前回は2007年
に出ています)。
 FAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グー
グル)と呼ばれる一部のIT銘柄が相場を牽引してPER等から見て“相当割高
”な水準にあって、何となく警戒感があるところへ、米中貿易戦争の行方が
見えないどころか、10月のペンス副大統領の対中国政策方針の演説の重みが、
中国の“核心的利益”とされる「中国製造2025」を見据えた戦略であること
が見えて来るのに伴い、表面的には決定的亀裂を避けつつも、早期に解決の
見込み難い問題との理解が広まって来ていたこと。トランプ政権の安定の要
であった、首席補佐官、国防長官等の高官が相次いで辞任に追い込まれたこ
と。トランプ大統領が、メキシコとの「壁」の建設費が付いていない予算を
拒否して政府機関の一部閉鎖が現実化する等、市場を安心させるどころか逆
に問題を煽るような大統領の放言等ワシントン政治の混乱及び12月FOMC後の
パウエル議長の会見での発言が市場の期待に反した“タカ派”的なものとの
受止めがキッカケになり、それに加えて、“AIトレード”とでもいうべき自
動的な高速トレードが、市場の売買を一方向へ極端に動かすという市場内部
の要因が重なって大きな値下がりになったとされています。
 当然、東京市場も大波乱に見舞われました。10月2日の日経平均(終値)
24270.64円から24日の19155.74円まで5114円、21.1%の値下がりになり、年
初来のリターンはマイナスの水準になりました。
 さて、2019年はどのような展開になるでしょうか。
 昨年2月と12月の米国株式市場の下落は、何れも金利上昇がトリガーにな
りました。利上げの見通しは重要な判断ポイントの一つです。従来、FOMCメ
ンバーの利上げ予想は、2019年は3回と見られていましたが、12月のFOMCで
は2回に変更されています。しかし、市場はこのまま利上げを継続すること
は出来ないと見ていて、先物市場の織り込みは1回とされています。
 米国の実体経済そのものは、2019年中は依然として堅調で、企業業績も堅
調な推移が予想されます。
 OECDのGDP見通しでは、18年2.9%に対し、19年は2.7%の成長が見込まれ
ています。年後半は、18年初からのトランプ減税の効果がなくなるうえ、米
中の貿易戦争の行方がカギを握りそうです。関税の報復合戦は企業経営者の
マインドに影響を与え設備投資の鈍化が懸念されます。世界経済の伸びが鈍
化をすれば純輸出も減少し、トランプ関税はブーメラン効果のように米国の
消費者へ跳ね返って来る懸念があります。
 2020年に再選を狙うトランプ大統領は、議会が“ねじれ”状態になったこ
とから大統領権限で出来る外交・安全保障、通商政策等で存在感をめざし、
かなり振れの大きい言動が考えられます。政治の振幅が金融・経済市場を振
り回す1年になるかもしれません。
 米国に次ぐ経済大国の中国も、米国の関税と制裁措置の懸念から19年は6.3%
程度への減速が見込まれています。但し、景気浮揚を目指し、金融緩和、内
需拡大に舵を切りつつあり、連れて新興諸国も対中輸出に支えられ回復方向
へ向かうとの見方も有力です。
 欧州は3月に予定されている英国のBrexitが秩序だって行われるのか見通
しは混沌としています。もし、強行離脱や、逆に離脱先送り、取り止め等に
なれば、プラス/マイナス両面で大きなリスクになります。EU地域も中国経
済鈍化の影響を蒙り易いドイツの景気後退、フランスの政治混乱、イタリア
のEUとの対立等不安定要因に事欠きません。
 肝心の日本ですが、年前半は順調な米経済と対中・アジア新興国への輸出
に支えられ、堅調に推移すると見られます。統一地方選挙と参議院の通常選
挙がありますが、この両方が行われる年は与党が苦戦するジンクスがありま
す。場合によっては衆参のダブル選挙も噂に上ります。秋の消費税の10%へ
の引き上げは国民経済に相当なダメージとなるリスクが大きくなりました。
景気浮揚策として軽減税率など複雑な議論が進んでいます。税制は公平で簡
素であるべきとの議論もあります。
 新天皇の即位もあり、新年号の年は良い年になることが期待できますが、
今年は年後半以降米経済の停滞も考えられ、投資行動は慎重さが求められそ
うです。
                      (平成30年12月28日 記)

 ◆◇◆

★年金トピックス――――――――――――――――――――――――――
 確定拠出年金(企業型)加入者の17年度運用利回り2.93%、
 通算利回り2.53%」
 ―「確定拠出年金の運用状況」2018年日経企業年金実態調査より

        NPO金融年金ネットワーク 社会保険労務士
        DCアドバイザー・ファイナンシャルプランナー
                             植村昌機
 ◇◆◇
 1. 17年度利回り2.93%、通算利回り2.53%
 直近1年間の利回りは2.93%で、前年の3.28%と比べると0.35%低下した
が、2年連続でプラス運用となった。17年度の利回りの分布をみると「3.0〜
3.5%未満」が最も多く、「2.5〜3.0%未満」、「3.5〜4.0%未満」が続い
た。利回りの最高値は7.63%、最低値はマイナス1.3%だった。
 制度発足以降の通算利回りは2.53%で、前回の2.81%を0.28%低下した。
最も多かったのは「2.5〜3.0%未満」、次いで「2.0〜2.5%未満」だった。
利回りの最高値は5.70%、最低値はマイナス2.89%だった。

 2. 想定利回りは1.74%で、7割以上が想定を上回る
 想定利回りは1.74%で、前回1.78%から0.04%低下した。過去10年、想定
利回りは低下し続けている。「2.0〜2.5%未満」が最も多く、「2.5〜3.0%
未満」、「1.5〜2.0%未満」が続いている。想定利回りと実際の運用利回り
を比較すると、78.8%が想定利回りを上回った。通算利回りでも72.3%が上
回った。

 3. 投信などリスク商品の配分割合は49.7%、拡大トレンド続く
 元本確保型商品の配分割合は50.3%で前回より1.8%減少、リスク商品が
1.8%増となり、その差は0.6%まで縮まった。リスク商品の配分割合は、
「40〜50%未満」が最も多く、「50〜60%未満」と続いた。半数近くが40〜
60%の範囲に収まった。リスク商品を60%以上配分しているDCは29%、40%
未満は23.1%だった。前回では、それぞれ24.5%と27.3%であり、リスク商
品のウエートを高める傾向は強まっている。

 4. デフォルトファンドを指定しているDCは50.8%、指定商品は元本確保
商品が41.9%
 デフォルトファンドを定期預金とする割合は34.0%、保険商品は7.9%で、
前回よりそれぞれ10%、4.1%低下している。バランス型投信などリスク商
品は8.9%で前回より4.3%増加している。

 5. 採用している運用商品では、ターゲットイヤー型投信が倍増、1割超え

 運用商品の採用率で90%を超えるのは、内外株式パッシブ投信、国内株式
アクティブ投信 内外債券パッシブ投信、バランス型投信、定期預金、など
7商品。保険商品は88.6%と初めて90%を下回った。ターゲットイヤー型投
信は10.5%(前回5.6%)と倍増した。採用本数の多い元本確保型商品やバ
ランス型投信、国内株式アクティブ型投信など本数を減らし、選別する動き
がある。

 6. 採用したい商品は新興国投資など新たな領域の商品、除外したい商品
は元本確保型商品
 採用したい商品で最も多いものは、ターゲットイヤー型投信やREIT、増加
幅の大きかったものは、新興国商品(エマージング株式・債券)。加入者の
選択の幅を広げたいとの考えのようだ。除外したい商品は、保険、定期預金、
バランス型投信など。本数の多い商品で選択が行われている。除外要件が緩
和されたので、今後、商品の除外は増加する可能性がある。

 7. 運用商品の採用本数は、平均21.2本
 前回は21.5本で、大きな変動はなかった。「15〜20本未満」が最も多く、
「20〜25本未満」が続いた。改正法による商品提供数の上限35本を超えるケー
スは少ない。

 8. 日常業務における課題として、加入者の利回りへの懸念が強い
 「加入者の運用利回りが心配」が57.5%と最も多く、前回より3.2%増加。
「継続投資教育の実施」を課題としている担当者も多く35.2%に上る。「担
当者の人員数の不足」も24.2%と前回と同様に高かった。DC導入企業の事業
主責任が問われる結果となっている。

 9. 運営管理機関の月額手数料は、半数以上が1人200〜399円
  加入者1人の月ベースの手数料は、「300〜399円」が38.9%で、300円が
最頻値だった。「200〜299円」が21.1%で続き、200〜300円台で約6割を占
めた。1,000円以上も13.3%あった。
 ◆◇◆

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■年金相談の現場から(85)
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 平成30年度税制改正と年金制度について

   NPO金融年金ネットワーク 1級FP技能士・社会保険労務士 小野隆璽
 ◇◆◇
 平成30年度税制改正が行われ、年金制度においても平成32年分扶養親族等
申告書から適用されることになりました。公的年金における扶養親族等申告
書については、これまでもいろいろと問題が発生してきたこともあり、この
税制改正も理解しておく必要があります。そこで、今回は平成30年度税制改
正内容と年金制度のかかわりなどを以下に説明させていただきます。

 (1)平成30年度税制改正の考え方
 現在の所得税の仕組みは、「学校を卒業したら、1つの会社で定年まで勤
め上げ、年金生活に入る。」といったライフコースを念頭に作られています。
しかしながら、近年、例えば、「高齢者が長年培った経理の知識を活かして、
リタイア後にベンチャー企業の立ち上げを支援する。」「会社員が平日の夜
や週末の時間を活かして、副業として事業の立ち上げを行い、事業が軌道に
乗ったところで独立する。」など、「働き方の多様化」が進展しているとこ
ろです。
 今回の所得税の見直しは、こうした働き方の多様化を踏まえ、様々な形で
働く人をあまねく応援し、「働き方改革」を後押しする観点から、特定の収
入にのみ適用される給与所得控除及び公的年金等控除の控除額が一律10万円
引き下げ、どのような所得の区分にでも適用される基礎控除の控除額が同額
の10万円引き上げられます。そして、これに伴い、給与所得と年金所得の双
方を有する場合に負担増が生じないよう、所得金額調整控除が措置されます。
 なお、今回の所得税の見直しは、個人の税負担に直結するものであり、十
分な衆知期間を設ける観点から、平成32年度分以後の所得税、平成33年度分
以後の個人住民税について適用することとされています。

 (2)給与所得控除の見直し
 給与所得控除については、基礎控除への振り替えによる給与所得控除の控
除額の一律10万円の引下げとともに、給与所得控除の上限額が適用される給
与等の収入金額の水準は改正前の1000万円から850万円となり、その上限額
は改正前の220万円から195万円となります。
 これにより、給与等の収入金額が850万円を超える者については税負担が
増加することになります。

 (3)公的年金等控除の見直し
 公的年金等控除は、給与所得控除とは異なり控除額に上限はなく、年金以
外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられる
など、高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっています。今回、世
代内・世代間の公平性を確保する観点から、年金以外に特に高額の収入があ
る者の公的年金等控除が引き下げられるとともに、上限が設けられます。
 この結果、公的年金等控除については、基礎控除への振り替えによる公的
年金等控除の控除額の一律10万円の引下げとともに、公的年金等収入が1000
万円を超える場合は、控除額に195万5,000円の上限が設けられます。
 さらに公的年金等以外の所得金額が1000万円超の場合には控除額の引下
げが基礎控除への振り替えによる引下げに10万円上乗せされ、控除額の上限
も185万5,000円となり、2000万円超の場合には控除額の引下げが基礎控除
への振り替えによる引下げに20万円上乗せされ、控除額の上限も175万5,000
円となります。

 (4)基礎控除の見直し
 基礎控除は、所得が高いほど税負担の軽減額が大きくなるため、生活に十
分余裕のある高所得者にまで措置する必要は乏しいのではないかと指摘され
ています。そこで、給与所得控除・公的年金等控除からの振り替えによる控
除額の引上げの一方で、特に所得がある者に限り、控除額を逓減・消失させ
る仕組みが導入されます。
 基礎控除の控除額は一律10万円の引上げにより、所得税については48万円
(改正前:38万円)となり、個人住民税については43万円(改正前:33万円)
となります。
 また、合計所得金額2400万円超で基礎控除の控除額は逓減を開始し、2500
万円超で基礎控除の控除額は消失します。

 (5)基礎控除の引上げと給与所得控除の引下げに伴う所要の改正
 基礎控除の引上げと給与所得控除の引下げに伴い、基礎控除と給与所得控
除の金額等を踏まえて設定されている税制上の金額要件等について所要の改
正が行われます。
 例えば、配偶者控除の合計所得金額については48万円以下(改正前:38万
円以下)となります。このため、給与収入換算での103万円以下の壁の額変
更はありません。
 以上のように、平成30年度税制改正が行われ、平成32年度分以後の所得税
から適用されますので、年金制度においても平成32年分扶養親族等申告書か
ら適用され、またまた様式変更等がなされるものと思われます。
 ◆◇◆

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┃ ■NPOアクティビティー
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
出版のお知らせ―――――――――――――――――――――――――――
 ◇◆◇
 《最新版・2018年版》 平成30年2月28日発売!!
 「労働組合のための退職金・企業年金ハンドブック」2018年版
 日本労働組合総連合会/NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
 共編
 A4判・140頁・頒価1部1,000円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の公布から16年が経過し、この間、
退職給付会計の導入、運用難による年金資産の積立不足、厚生年金基金の代
行返上、税制適格退職年金の廃止等を契機に、退職給付制度の再編が進行し
てきました。
 厚生年金基金や税制適格退職年金から確定給付企業年金に移行後に、国際
会計基準(IFRS)や財政運営基準の厳格化の動向をにらみ、キャッシュバラ
ンス・プランや確定拠出年金に切り換える動きも出てきています。確定拠出
年金も、2016年6月より普及の拡大に向け改正法が施行されています。さら
に、厚生年金基金改革法が2014年4月に施行され、解散や移行先制度の検討
等、企業年金の再編は第二のステップに入りつつあります。
 本書は、2004年11月に2005年版を創刊以来、本年版で14冊目になります。
本年版は、旧版のデータ等を最新のものに改訂すると共に、確定給付企業年
金に関する記述を拡大・加筆。掛金拠出の弾力化、リスク分担型企業年金の
概要を解説。確定拠出年金改正法の概要、年金ガバナンス体制の見直し・強
化等、大幅に加筆しました。
 会社から制度再編提案がなされた時点で、労組員の皆様が、公的年金から
会社提案まで内容を熟知していることが労使交渉のポイントです。そのため
には、年金制度の基本知識と制度再編に際して従業員サイドからの留意点を
組織内で共通認識することが第一歩です。そこで、本書をテキストや副読本
として、年金研修会、勉強会の実施をお勧めします。また、加盟単組からの
ご相談があった際に、本書を参考にして対応されている産別も見受けられる
ようになりました。

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 《最新版》平成30年6月29日発売!!
 「働く人のための確定拠出年金ハンドブック」(第5版)
 ―2018年法改正対応― 日本労働組合総連合会
 NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク:共編
 A4判・112頁・頒価1部1,500円(荷造り・送料実費を頂きます)
 ◇◆◇
 本ハンドブックは、施行16年目を経過した確定拠出年金制度が法律制定の
趣旨にそって、「公的年金と相まってサラリーマンの老後生活保障の柱」の
一翼を担える制度に仕上がっていくように、との期待をこめて、主として加
入者、労働組合の立場から課題と対応の「考え方」を示したものです。私た
ちの活動の中から、これまでに経験した事例や課題・問題点を踏まえて整理
を行いました。
 第I部部は、確定拠出年金制度の概要と基礎知識を法律に沿って解説、第
II部部は、制度のポイントである「運用」と「教育」についての考え方と提
言について述べています。
 本書は、旧版のデータを最新のものに改めにとともに、2018年の法改正に
対応し大幅に書き直し、第5版として発行するものです。
 すでに、退職給付制度の一部または全部を確定拠出年金に移行した労組の
皆様には、制度の運営改善に、これから移行が想定される皆様には、制度設
計・運営のご参考になれば幸いです。
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●次号(第178号)は2月1日に送信の予定です。
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